1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610359
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松田 俊道 中央大学, 文学部, 助教授 (20276687)
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Keywords | セント・カテリーヌ修道院 / マムルーク朝 / 遺言書 / 財産証書 / 裁判官 / 公証人 / 復帰財産庁 |
Research Abstract |
本年度の計画通りマイクロフィルムで収集したセント・カトリーヌ修道院文書の解読作業を行なった。同文書のなかの法文書に重点を置いたが、とりわけ財産処分に関するものに着目した。マムルーク朝時代の財産処分方法については、三通りの選択が可能であった。すなわち、(1)遺言書によるもので、ムスリムの場合は法定相続人以外に財産の3分の1を超えないで、ある個人や慈善のために遺産を残すことを明示できた。(2)財産証書によるもの。ある個人が遺言を残さなかった場合、財産証書を作成して財産処分を行うことが可能であった。これは裁判官の認可のもとに公証人によって作成された。この文書が作成される目的のひとつは、文書なかで特定された相続人が確実に相続分を受け取ることであり、もう一つの目的は、相続人のいない財産の目録を作成することであった。というのは、相続人によって相続されなかった残余部分は国庫に帰属したからである。マムルーク朝時代には復帰財産庁があり、この文書の作成の際には、国庫や復帰財産庁の役人が立ち会っている。(3)両者の組み合せによるもの。 以上の処分方法を手掛かりにして、同修道院文書のなかから、252番、275番を取りあげ、分析を行った。その結果、マムルーク朝時代のエジプトやシリアでは、普通に日常生活を送る人々は、遺産相続の際には、遺言書や財産証書を作成し、一般的には遺産を売却して、負債の返済、埋葬の費用などにあて、残りを相続したことが分る。また、国家権力の介入から逃れるためワクフ化することも行われていた。 以上を論文「マムルーク朝における遺産相続-セント・カテリーヌ修道院文書事例から-」にまとめた。
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Research Products
(1 results)