1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610363
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 助教授 (90298836)
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Keywords | 文書行政 / 居延漢簡 / 敦煌漢簡 / 古文書 / 簡牘 / 秦漢史 |
Research Abstract |
漢代文書行政の実態解明のための基礎的作業を目的とする本研究は、中国西北辺境出土の簡牘を主要な材料として用いたため、出土漢牘全件のカード化と画像データベース化が必要となる。本年度は、昨年度に引き続き、敦煌出土簡牘のカード化を進め、これを終了したが、3万件を超える居延出土簡牘については、居延旧簡1万3000件のカード化を完了した。画像データは、敦煌出土簡牘全件と居延新簡についての作業は完了したが、旧簡はもととなる写真データの不備もあって、一部にとどまった。 これらの基礎的資料整理に並行して、本年度は、敦煌戦線と居延戦線における文書行政の共通点と相違点の摘出をすすめた。その過程で明らかになった問題点は、従来の簡牘研究が出土件数の多い居延を中心に行われたため、出土文書と出土遺址に置かれた官署との関係が、厳密な方法論的準備なしに展開してきた、という点である。西北辺境出土の簡牘が文書行政解明の第一等史料であることは言をまたないが、その際に、出土簡牘がどのレベルの官署で作成されたものであるかを特定することが、決定的に重要である。大量の出土例のある居延では、その件数の多さがかかる方法的考察を要求してこなかった。しかし、各遺址からの出土簡牘件数の必ずしも多くない敦煌では、従来の方法では解明できない問題があり、現在行われている官署比定の結果は必ずしも正確なものでない可能性が浮上してきた。 こうした考察を踏まえ、あらためて敦煌出土簡牘を検討した結果、居延との相違点は、敦煌地方の自然環境、それによる軍事施設配置および人員機構の特殊性に由来するものであることが明らかとなった。すなわち、漢代文書行政は、末端レベルにおいてはその地域的特殊性を反映させながら運営されたきわめて柔軟なシステムであったことが具体的に解明され、そのいくつかの側面を研究成果報告書に発表することになる。
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