1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610364
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
森田 憲司 奈良大学, 文学部, 教授 (20131609)
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Keywords | 石刻史料 / 元朝 / 漢人知識人 / 類書 / 事林広記 / 科挙 / 士大夫 |
Research Abstract |
この数年、各種資料集の出版などによって資料的に豊かになってきている元朝の科挙を、研究の中心におき、おなじく異民族王朝である遼金との比較も視野に入れつつ、文集、地方志所収の資料の収集、分析をおこなった。これによって、かねてからの課題である、より多くの科挙合格者名の収集、累次の科挙の具体的内容についての解明に関して、一定の成果をあげえた。科挙に関しては、答案集『類編歴挙三場文選』の調査をおこなったこと、とくに、これによって前半期の科挙については、関係者の名前などの実施の細目を今まで以上に具体化できたことが、本年度の成果として重要であると考えている。 また、地域社会における知識人の問題に関しては、石刻資料を利用しての元朝支配下の地域社会と知識人との関係を、碑記を書く者と依頼する者の関係から分析する試みとして、慶元(浙江省寧波)を対象として、元朝の官職を受ける受けないに関わらず、知識人相互に、あるいは元朝地方官庁との間に交流があったことを明らかにし、従来の宋の遺臣イメージとは異なる士大夫像を描くことができた。この点については、奈良史学掲載の論文で公表した。 また、新たな視点として、類書(百科全書)の史料的利用に着眼し、かつて調査をおこなった『事林広記』の諸版本への再検討の作業を開始し、研究課題への利用を可能とするための準備をおこなった。これは、来年度以降の研究の新たな課題となるものであると考えている。
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