1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610384
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐藤 清隆 明治大学, 文学部, 助教授 (90235333)
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Keywords | 居酒屋 / 近世ロンドン / エールハウス / エール規制法 / 醸造業組合 / エールハウス統制 / ビール / 無秩序 |
Research Abstract |
本年度は、「近世ロンドンの居酒屋に関する研究-エールハウス政策を中心として-」と題して、研究成果を公表した。その論文は、これまでほとんど研究のない、当時(16世紀初頭から17世紀前半が対象)のロンドン市のエールハウス政策を、13世紀後半以降の「エール統制」から「エールハウス統制」への変化の流れのなかに位置づけ、その特徴を明らかにしようとしたものである。そこで得られた知見は以下の通り。 当該時期は、まず第一に、一方では、ビール醸造業が発展を遂げ、エール以上にビールの消費量が増え始めた頃であるが、他方では、エールハウスが下層の人びととの結びつきを強めながら、とくに16世紀後半以降、当時の人口の増加率をはるかに超えて増大し、公権力から「悪弊や無秩序の温床」と見なされるようになった時期である。第二に、こうした状況の「変化」のなかで、政策も従来からの「エール規制法」中心から、「エール規制法」と1552年に導入されたエールハウスの「営業許可制」並存へと変わっていくのであった。ロンドン市当局は、一方では、「醸造業組合」との「共同」のもとにエールやビールの価格・品質・量目規制を推し進め、他方では、王権の指示を受けつつ、「治安」統制の側面から、エールハウスの「営業許可制」を導入し、その統制を押し進めたのである。「醸造業組合」の方は、外国人のビール醸造業者を取り込むなかで、その権限や管轄地域を拡大し、ロンドン市当局と「共同」しながら醸造業者のエールやビールの価格・品質・量目規制を推し進めた。さらに、同「組合」傘下の徒弟、サーヴァントなどに対する「風紀統制」もおこなった。王権は、その権威の拡大に伴いつつ、ロンドン市の「治安」はいうまでもなく、その領域を越えた「治安」を統制する立場からも、16世紀後半以降ロンドン市当局に強力に指示を出し、エールハウスの統制化に貢献したのであった。
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