1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610386
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Research Institution | Osaka International University for Woman |
Principal Investigator |
南 直人 大阪国際女子大学, 人間科学部, 助教授 (20181951)
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Keywords | 食生活 / 栄養 / 近代化 / 健康 |
Research Abstract |
まず、19世紀ドイツにおける都市化の進行についての大まかな概要を調べ、その後、近代ヨーロッパにおける食生活や食料供給のマクロの歴史的変遷を研究した。他方、19世紀後半から20世紀にかけて、ヨーロッパにおける平均寿命が全般的に大きく上昇していることを示し、同時期に民衆レベルでの平均的な食生活の向上・栄養水準の改善の傾向が出現することとの関連について考察した。結論的には、平均寿命の上昇は単に栄養レベルの改善の結果というより、工業化・都市化に伴う全般的な社会構造の転換と関連するというべきである。しかし、食の視点からみると、19世紀後半以降の「近代的食生活」の成立という大きな傾向の下で把握すべきであることもわかった。 この「近代的食生活」は、栄養レベルの問題であるばかりでなく、世界史的にはヨーロッパ人が世界を政治・経済的に、或いは環境・生態学的レベルでも支配してゆくプロセスの一環として捉える必要がある(砂糖や茶の生産、等)。と同時に、食品工業の発達による新しいタイプの食品が家庭の食卓に普及してくるという現象も考察すべきである(缶詰や種々のインスタントフード)。さらに、食をめぐる科学・法制・衛生指導など、単に食物摂取ではなく、イデオロギーも含めた幅広い側面から食生活の変化を考えてゆく必要性も明らかになった。特に、19世紀末のヨーロッパにおいて、健康というキーワードを軸に、菜食主義や禁酒運動など食をめぐる新たなディスクールが一般に受容されるようになる。そうした社会意識の面でも「近代的食生活」の形成を考察してみた。
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Research Products
(1 results)