2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610387
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Research Institution | CHIBA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田村 孝 千葉大学, 教育学部, 教授 (80179902)
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Keywords | 東地中海世界 / 海賊 / ポンペイウス / 小アジア / ミトリダテス |
Research Abstract |
本年度は主に東地中海海域における海賊の活動とそれらを鎮圧する共和政ローマの政治史を中心に研究をすすめた。ローマが東地中海世界に覇権を確立するためには、ヘレニズム諸王国、ギリシア系都市土着諸民族などの抵抗を排除しなければならなかった。加えて海上では海賊の諸勢力を根絶することもまた必要だったのである。 東地中海域は遠くミケーネ時代から海賊の活動がきわめて活発であった。ホメロスの著作からも海賊の活動がうかがわれるが,ギリシア時代においては、アテネをはじめ有力都市も海賊の積極的な排除に努めた形跡は見られない。海賊そのものの活動ものちのローマ時代に比べて小規模だったこともあるが,何よりも後らの活動がポリス生活そのものの基盤を脅かしたりするはどのものでなかったからであろう。 この傾向はローマ時代には、大きく変化をとげる。海賊は小アジア南部(ヤリキア)を拠点に一大勢力となり、商船をおそい、沿岸都市を略奪した。とくにローマの生命であるコクモツ輸入を脅やかし、ローマの外港オスティアをも直接攻撃するに及んで、ローマはこれの根絶を図子ことを考えざるをえなくなった。第67年護民官ガビニラスはポンペイウスに非常大権(一種の写る独裁指揮権)を与えるよう氏会に提案し、これが認められた。ここに共和政ローマの政治的原則は崩れ,写る一人支配への道、すなわち帝政への道が敷かれたと見てよい。かくて海賊の活動がローマの国制変化を促す一要因となったのである。本年度の研究は大要以上の如くであった。
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