2001 Fiscal Year Annual Research Report
理化学的分析方法による総合的仮説『縄文時代前期の儀礼的交換体系』の検証
Project/Area Number |
10610390
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小杉 康 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (10211898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永島 正春 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助教授 (50164421)
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Keywords | 縄文前期 / 胎土分析 / 赤色顔料 / 土器群構成 / 水汲遺跡 / 焼き漆 / 漆塗り浅鉢形土器 / 胎土組成マップ |
Research Abstract |
本研究は縄文時代前期後半の土器(関東地方から中部地方東部に広がる諸磯式土器と中部地方西部から近畿地方に広がる北白川下層式土器)を分析対象として、伝統的な考古学の分析方法である型式論的・技術論的方法によって構築した仮説『縄文時代前期の儀礼的交換体系』を、土器の胎土分析や赤色顔料分析等の理化学的な分析方法によって検証することを目的とする。 本研究の最終年度にあたる本年度は、これまでに資料提供を受け胎土分析を実施できた各遺跡の分析結果と、赤色顔料の分析結果と、各遺跡において復元した土器群構成の結果とを総合的に検討して、本研究の総合的仮説を構成する各仮説項目の当否を判断した。検討の結果、棄却された仮説項目については、新たに判明した胎土分析・赤色顔料分析の成果と土器群構成とを組み込んだ新たな仮説項目を再設定した。特に本年度の成果を以下に示す。 1)水汲遺跡(愛知県藤岡町)に搬入された諸磯式浅鉢形土器については、検証項目において諸磯式土器圏の各地から運び込まれた状況を想定していたが、胎土分析の結果、諸磯式圏内の特定の地域ないしは遺跡からの搬入であることが判明した。 2)北白川下層式土器圏の各地の遺跡で確認される浅鉢形模倣土器は、それぞれの遺跡で製作されていた状況を想定していたが、胎土分析並びに土器群構成の検討の結果、中部地方西部の特定の地域ないしは遺跡群で集中的に製作され、それが移入された可能性が高まった。 3)諸磯式土器圏で製作される漆塗り浅鉢形土器の大半は、単に土器焼成後に彩漆を塗布しただけのものではなく、焼成直後に漆を塗布する焼き漆の技法によって製作されている。 胎土分析資料については、顕微鏡観察用のプレパラートを作成するために破壊分析となる。そのために資料を所蔵する各自治体の教育委員会等では、資料借用を許可するまでに多くの検討時間を要する場合もあった。本年度末になり許可がおりた長野県・福井県・大阪府等の各地域の胎土分析資料については、現在資料借用の手続きをしたり、胎土分析用プレパラートの作成中である。これらの各地域のデータが加わることによって、本研究の成果図となる「胎土組成マップ」の作成が可能となる予定である。
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