1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610393
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 芳裕 京都大学, 文学研究科, 助教授 (90127093)
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Keywords | 土器 / 胎土 / 混和材 / 器種 / 海成粘土 |
Research Abstract |
研究課題の一つである土器の焼成時の形状変化の研究については、静岡県清水市天王山遺跡および同天神山下遺跡出土の縄文土器の胎生の成分から、その原因となる要素の分析をおこなった。螢光X線分析では、鉄の含有率が正常な土器よりも多く含まれる傾向があることが明らかになり、またX線回折分析では、発泡変形した土器の胎土からスピネルを検出している。形状変化の要因となるべき原因のいくつかが抽出でき、分析資料の追加によって、単一の要因か複数の要素が複合されたものかを検討する段階である。窯を用いた高温焼成による須恵器や瓦の溶融化現象については、焼結過程における粘土の物理的変化、温度による海成粘土特有の成分の変化などを取り上げて、溶融化の原因を明らかにし、 「須恵器の焼結と海成粘土」『国立歴史民族博物館研究報告』第76集、pp.1〜19(1998年)に研究成果を発表した。 土器の製作技術の復元研究の一つである、混和材の分析については、混和した砂の種類の差を検出すると同時に、器種や器形の大小による混和材の含有率の差を検討した。香川県中間西井坪遺跡の古墳時代の土師器、および同県鴨部川田遺跡の弥生前期の土器について分析し、前者では角閃石や輝石などの有色鉱物を意図的に混和した状態の土器の存在が明らかになり、遺跡報告書に成果を発表し、後者では器種と器形の大小によって砂の混和量に大きな差があることを明らかにした。またこの研究課題は、国立歴史民族博物館の特定研究『歴史資料の分析の多角化と総合化』の共同研究の一環として、長野県御代田町川原田遺跡の縄文中期の土器についても実施中である。
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