1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610394
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福永 伸哉 大阪大学, 文学研究科, 助教授 (50189958)
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Keywords | 弥生時代 / 古墳時代 / 青銅器 / 使用痕 |
Research Abstract |
本年度は3年計画の第二年目であった。出土青銅器の使用痕研究において効果的な成果をあげるために、中心的な考察の対象となる青銅器の種類を弥生時代の銅鐸および銅鐸片と弥生時代から古墳時代の鏡片に絞り込むことにした。 銅鐸(片)については、徳島県、鳥取県、岡山県、兵庫県などの出土遺物について実地観察をを行い、表面や破断面の磨耗の有無に微妙な違いが認められることに着目した。銅鏡についても上記の地域の資料観察を行ったが、磨耗の状況が個体によってさらに違うことが判明した。これらの違いが、器物の型式や出土状況とどのような関係があるのかを今後検討していくが、現時点では鏡片は墳墓出土よりも集落出土のものが磨耗が著しい傾向があることを指摘できる。また漢鏡より製作時期の下がる三国鏡のほうが磨耗はすくない。このことは、おなじ銅鏡破片でも社会での使われ方や意味には違いがあったことを示唆している。銅鐸片については、鏡片と比較すると、明確な磨耗のあるものや穿孔の施させた事例がすくない。また、出土状況の点でも墳墓からの出土例が見られない点が大きく異なる。 弥生後期後半から古墳時代初頭にかけて、完形品を壊して破片が広く流通するという共通性がある一方で、破片にされた器物間でそれらの使用痕が示すありかたは異なっている。こうした青銅器破片の使用目的・意義については、威信財説、鋳潰し用の原材料説、製品不足のために分割して増やしたとする説など、さまざまな見解が提出されている。 残りの研究期間においては破片資料の集成作業をさらに行い、できるだけ多数の実物観察に基づいてこれらの論点と関わる事実を抽出し、青銅器破片というこの時期だけに出現する考古遺物の意味を明確にすることによって、それを必要とした時代の特質を明らかにする。
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