1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島最古の化石人骨の発見を目指して -瓢箪穴遺跡の旧石器時代の文化層の調査
Project/Area Number |
10610397
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
梶原 洋 東北福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (80161040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百々 幸雄 東北大学, 医学部, 教授 (50000146)
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Keywords | 人類化石 / 瓢箪穴遺跡 / 石灰岩地帯 / 土杭 / 中期旧石器時代 / 古地磁気年代測定法 / 4〜5万年前 / 12、3万年前 |
Research Abstract |
最近の研究によって日本列島の旧石器時代の始源が50〜60万年前に溯る現状にあるとき肝心の主人公である人類化石の学術的な発見は皆無に等しく、その系統や進化についてまったく手掛りがない現状にあります。そこで、東北旧石器文化研究所と東北福祉大学考古学研究会は瓢箪穴遺跡調査団を組織し、岩泉教育委員会の協力を得て、人類学・古生物学・地質学・地形学・理化学年代などの研究者や地元の研究者にも呼びかけて1995年(第1次)から1997(第4次)まで発掘調査を実施してきました。 本年も上記の目的を達成するため4月24日から5月5日まで第4次調査を実施しました。 遺跡の位置と立地 瓢箪穴遺跡が位置する岩手県下閉伊郡岩泉町一帯は、約1〜2億年前に形成されたわが国最大規模の石灰岩地帯で、周辺には100カ所以上の大小様々な洞穴や岩陰が点在しており、そのうち約20カ所が人類に関わる遺跡とされています。瓢箪穴遺跡は標高178m、現河床面との比高差約50mに位置し、間口・奥行き共に約20m、高さ約10mで、高位段丘群形成期以前に侵食され,少なくとも30万年前以前に開口したと考えられています。 第4次調査は本年4月24日から5月5日までで実施されました。今回の調査はA区、C区とE区の間,そして新たに新設した洞穴の奥(F区),さらに,瓢箪穴の下位22mに位置する「しんいち岩陰」を対象として行われました。 (A区)18層 各種の頁岩でできた斜軸尖頭器2点.両面加工尖頭器5点.スクレイパー1点.両極剥離痕のある石器1点。 (F区) 土壙 大きさは東西80cm×南北60cm×深さ45cmを計り,埋土が6枚あり,埋土を2枚上げたところ(10数cm下)で、土壙の全面に30個ほどの10〜30cmの扁平な石灰岩が敷きつめられ,さらに下層3枚の埋め土を取り上げると堅い底になります。遺物は埋土の最上層から頁岩でできた斜軸尖頭器1点,スクレイパー1点.流紋岩で出来た抉り入れ石器(斜軸尖頭器) 1点、そして敷石の頂下からシカの骨片1点、底面からスクレイパー1点が発見されました。 (しんいち岩陰) 岩陰全体に及ぶ撹乱層から縄文土器片少数.弥生土器片200点以上.小さな茎部のついた石槍1点が発見されました。 旧石器時代包含層:頁岩製の斜軸尖頭器1点.二次加工石器1点,剥片1点,シカの骨片1点が発見されました。 調査の成果と今後の課題 1. 洞穴最奥部のF区で発見された土壙は、約4〜5万年前とされる地層が覆っているので、ほぼ同年代のものと考えられます。また、土壙の構造は、ヨーロッパなどで発見されている同時期のネアンデルタール人の墓と非常に良く似ていますが,肝心の人骨は全く発見されませんでした。そして遺物もそれぞれが「置いた」状態で発見されており,何かを意図したのかも知れません。この土壙の性格については今後類例を発見して解明したいと思います。 2. 今回新たに調査対象とした「しんいち岩陰」から旧石器時代後期終末の遺物が発見されたことから旧石器時代に属する洞穴・岩陰が瓢箪穴遺跡周辺に多数点在すると予想され,ますます旧石器時代人骨の発見が期待されます。A区18層発見の9点の石器が120cm×90cmの範囲に集中して発見され、瓢箪穴の使われ方を解明する糸口がつかめました。通常の中期旧石器時代遺跡では発見不可能な獣骨などを基に、当時の食生活や洞穴の使用された季節などを復元したり,石器の他に骨角器などを発見して生活形態を多方面からアプローチする。 3. 各地区の下層を掘り下げ,より古い文化層を探す。 4. 洞穴の奥から開口部、そして前庭部斜面の各区をつなげ,それぞれの層位的関係を明らかにする 5. 洞穴遺跡はその性格上,考古学のみならず関連科学の実験場でもあるので、自然科学との連携をますます深めていく必要がある。 6. 木遺跡の年代のついて,初めて古磁気年代測定法と地質学的な検討から、A区10層が4〜5万年前に, 19層が12、3万年前という値が提示されました。それでもまだ不十分なので,できる限りの測定法を駆使して,より精度の高い年代を与えていきたい。
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Research Products
(2 results)