1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610401
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
松村 恵司 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 室長 (20113433)
|
Keywords | 〓帯 / 銅〓 / 腰帯 / 革帯 / 律令位階 / 衣服制 |
Research Abstract |
〓帯とは律令時代の官人の朝服と制服に伴う腰帯で、特に6位以下の中・下級官人の〓帯は、「衣服令」に烏油腰帯と規定され、黒漆塗りの銅〓で飾られていた。本研究は、〓帯の位階表示機能の構造を明らかにし、出土銅〓から位階を推定する方法の確立を目的とする。 初年度にあたる今年度は、(1)都城出土銅〓の規格性を摘出するため、一平城宮出土銅〓の計測作業と型式学的分類作業を行った。この結果で、平城宮出土品に2系列の銅〓が存在し、文官と武官の〓帯に対応する可能性があること、出土例が少ない系列の銅〓は、武官の〓帯である可能性を抽出できた。これに対して文官系列の銅〓は、出土例も多く、表金具に1分(3ミリ)単位で、8段階の明瞭な規格差が存在し、初位から6位までの正従8ランクの位階差に対応することを把握できた。この結果に基づき位階比定標準モデルを作成した。また藤原宮出土銅製品の見直し作業を行ったが、慶雲四(707)年の革帯始用記事にあたる銅〓は確認できず、銅〓が平城宮から開始される見通しが得られた。 (2)全国出土銅〓の集成作業として、東日本出土銅〓の集成作業を行った。東日本では集落遺跡出土例が圧倒的多数を占め、郡庁や国庁で執り行われた政務や儀式に、地方官人たちが朝廷の公事同様、朝服を着用して臨んだことが推測される。衣服令の規定は地方官面でも遵守された可能性が高い。ただし東国集落出土銅〓の中には、平城宮出土銅〓と明らかに構造や型式が異なるものがみられ、地方における〓帯の生産・支給体制が中央と異なる可能性がある。この解明は今後の大きな課題となり、西日本のあり方と比較検討する必要性が生じている。 (3)〓帯制度の源流に関する調査として、中国・朝鮮の衣服制度に関わる史料の収集作業を開始した。翻訳作業を含め、来年度以降も調査を継続する予定である。
|