2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610401
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Research Institution | Nara National Cultural Properties Research Institute |
Principal Investigator |
松村 恵司 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 室長 (20113433)
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Keywords | 〓帯 / 律令位階制 / 銅〓 / 衣服令 / 革帯 |
Research Abstract |
律令位階制で六位以下の中・下級官人の朝服と制服に伴う腰帯は、「衣服令」に烏油腰帯と規定され、黒漆塗りの銅製〓で飾られていた。本研究は、〓帯の位階表示機能の構造を明らかにし、出土銅〓から有位者の位階を推定する方法の確立を目的とする。 研究の最終年度にあたる本年度は、1:完成した全国出土銅〓集成をデータベース化し、分布図を作成した。集成点数は最終的に1914点に達した。また正倉院伝存馬具をもとに、奈良時代の馬具の構造を明らかにし、〓帯具と混同視された馬具の飾金具を分別した。 2:都城と地方出土銅〓の比較作業を行ったが、出土品に地域色等はみられず、平城宮出土品から帰納した規格性が全国に貫徹していることを確認した。〓帯は、平城京内の大蔵省管下の官営工房で生産され、その補修は地方の国衙工房でなされた可能性が高い。 3:〓帯制度の源流を探るため、中国の〓帯具の集成作業を行い、〓帯制度に関する文献史料を収集した。さらに〓帯の着装方法を明らかにすべく、中国の絵画資料を収集した。中国では金・銀・鍮石・銅鉄など〓の材質と、〓数によって官品を表示しており、わが国も〓数によって上下階を区分した可能性がある。また日中間の〓の形態の類似性が明らかになった。 4:研究成果の集約に向けて、平成12年11月16・17日、全国の〓帯研究者を招聘し、研究集会「〓帯をめぐる諸問題」を奈良国立文化財研究所で開催した。研究集会では、〓帯の位階表示機能の存否と、銅〓から石〓への材質変化、地方行政機構における地方官人の服制などの諸問題について討議した。席上、銅〓の大小は時期的な型式変化によるものではないか、との重要な指摘がなされ、この問題に議論が集中した。〓帯の位階表示機能を証明するため、集成資料個々の精緻な年代的検討が新たな課題として浮上した。
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