2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610402
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
佐川 正敏 東北学院大学, 文学部, 助教授 (40170625)
|
Keywords | 山田寺式軒瓦 / 火焔文 / 渡来(系)工人 / 重圏文 / 縦置き型一本造り / 竹状模骨痕 / 片ほぞ形 / 垂木先瓦 |
Research Abstract |
1.平成12年度の研究目的:中国地方・四国地方・九州地方に分布する山田寺式(系)軒瓦の調査と研究 2.平成12年度の資料調査:(1)中国地方では岡山県関戸廃寺・五反廃寺、広島県横見廃寺・明官寺廃寺、(2)四国地方では香川県妙音寺、(3)九州地方では福岡県上岩田廃寺の瓦調査を実施し、写真撮影や調書作成による記録と資料化を行う。 3.平成12年度の調査研究成果:(1)中国地方の横見廃寺例と明官寺廃寺例は弁端がそり気味で、弁の輪郭線をもたず、子葉に火焔文を伴うが、関戸廃寺例は弁端が丸みをもち、輪郭線をもち、子葉が火焔文を伴わない、という相違を見せる。これに対して製作技法は、ともに瓦当外縁上半を丸瓦広端部が代行するという特徴をもち、これは6世紀末に日本に伝播した製作技法と異なり、新たに朝鮮半島から伝播したものである。渡来(系)工人が畿内の山田寺式軒丸瓦の文様を受容しつつ製作した可能性が高い。(2)四国地方の妙音寺例は軒丸瓦の外縁の重圏文が外側から2本目が太く、これは奈良県山田寺例と共通する重要な特徴である。垂木先瓦が方形である点は奈良県山田寺と異なる。(3)九州地方の上岩田廃寺例は外縁に二重圏文をめぐらす以外に山田寺式軒丸瓦との類似性は乏しい。しかも、製作技法は縦置き型一本造り、竹状模骨痕を有する行基式丸瓦を接合し、広端部は片ほぞ形に削るという特異なものである。ただし、垂木先瓦と鬼瓦は蓮弁の弁端が尖る山田寺式軒瓦類似の特徴をもつ。なお、福岡県上白水遺跡と塔原廃寺の軒丸瓦は外縁が重圏文をめぐらすが、複子葉であり、山田寺式軒瓦との距離はあるものの、今後山田寺式軒丸瓦の概念規定を再検討する中で、それらの位置づけも考えていきたい。
|