1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610403
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
花谷 浩 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (70172947)
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Keywords | 古墳時代の馬具 / 馬具副葬古墳 / 古墳の階層性 |
Research Abstract |
今年度は、西日本を主な対象として、馬具を出土した古墳の地名表を作成し、これをデータベース化した。これによると、各地で多くの古墳群が発掘調査されてはいるが、従来から指摘されてきた、馬具出土古墳の地域的偏在性は解消されない。 西日本で特に馬具が多数出土するのは、奈良県と福岡県。奈良県が100基を越え、福岡県は200基を越える。これ以外は2桁にとどまるから、これら二つの県は数において突出している。奈良県は王権の中枢だから当然としても、福岡県の数はずば抜ける。その要因は半島での外交および軍事的活動にあるだろう。『日本書紀』をみると、馬が戦場で活動した記事は天武元年(672)の壬申の乱以前には国内関連記事ではみあたらず、半島での軍事行動にともなうものしかない。馬具があれば当然馬がいたわけだから、その背景としての牧の存在などを考慮すべきだ。牧の存在は西日本よりも東日本にその存在が指摘される。この問題は次年度に継続して考えたい。 古墳群での馬具副葬古墳のあり方、あるいは地域的単元でのあり方は、首長級古墳での副葬馬具の型式変化と群集墳におけるそれ、という時系列的な側面、および同時代での両者の対比という共時的な側面、この二つの方向での分析を進めた。大和、吉備、出雲、筑紫などでいくつかの地域を重点的にとりあげた。共時的側面では、須恵器型式を基準としたが、馬具の型式変化を考慮し、須恵器のTK23型式以前、TK47〜MT10型式、MT85型式以後、の大きく三段階に分けて分析した。その結果、初期段階では、首長墳と群集墳の間に大きな格差があるが、後者の階層がその後、古墳規模においても副葬馬具の型式においても細分化されていく過程がうかがえた。古墳規模の階層性の大小は地域によって違うので、これと馬具型式との関連を考えていきたい。
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