1998 Fiscal Year Annual Research Report
方言形成に関わる歴史的中央語の位相的性格についての研究
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10610406
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 隆 東北大学, 文学部, 助教授 (00161993)
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Keywords | 方言形成史 / 中央語史 / 位相 / 『日本言語地図』 / 『方言文法全国地図』 / 『日本方言大辞典』 / コマ(駒) |
Research Abstract |
本研究は、歴史的中央語におけるどのような位相の言葉が方言形成に関わってきたかを明らかにしようとするものである。この目的のために、本年度は次の作業を行った。 (1) 文献上の位相語リストの作成 歴史的に位相差の確認される言葉を収集し、整理するために、どのような観点から作業を行うのが有効かを検討した。結果として、形態の違い、意味の違い、言葉の意味分野、使用された時代、文献の種類などの観点が重要であるとの結論を得、これらの観点から作業を開始した。 (2) 方言上での分布状況の調査 上記の作業が終了した項目について、国立国語研究所『日本言語地図』『方言文法全国地図』、小学館『日本方言大辞典』によって、現代の方言分布を確認した。必要に応じて、文献との対応が明瞭に把握されるような形式の方言分布の略図を作成した。 (3) 典型的事例についての個別研究 典型的事例として、語彙からは「こま(駒)」という語を選び、通時的に考察した。その結果、この語は上層の書記言語では「馬」の歌語や「子馬」の意味で使用されたが、庶民の口頭言語では中世を中心に「雄馬」の意味で使用されたことが明らかになった。この歴史のうち、方言が反映するのは、位相的には明らかに庶民の口頭言語の方であることが判明した。これは、他の言葉を分析する際にも、大きな見通しとなる成果である。また、文法からは助動詞「けり」を取り上げ、文献と方言(ケなど)との対応関係を検討した。その結果、歴史的中央語を受け入れる際に、東西で傾向の違いが存在することが指摘された。
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Research Products
(1 results)