1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610411
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 熊本大学, 文学部・助教授教育学部, 助教授 (60253704)
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Keywords | 古記録・古文書の語法 / 古記録 / 古文書 / 被成(なさる) / 敬語 / 口語 / 被成(なさる)の系譜 |
Research Abstract |
1、 今までの調査をもとに、平成10年秋(十月十六日)の第七十九回訓点語学会研究発表会(於九州大学)にて、「『被成(なさる)』の系譜」と題して研究発表を行った。これは、その後『訓点語と訓点資料』に投稿し採択された。同誌第一〇二輯に掲載される(発行は十一年三月末日)予定である。その内容は、(1)「被成(なさる〉」の用例の出現状況を文献のジャンル別に明らかにしたもので、「被成(なさる)」は平安時代は主に古記録・古文書の世界で使用されていたこと。(2)鎌倉期以降になると『愚管抄』のような歴史物や『延慶本平家物語』 『覚一本平家物語』『太平記』のような軍記物語に用例が見えることがわかった。その後、室町後期の口語文献とされる「抄物」に用例がでてくるのがわかった。 2、 「被成(なさる)」の出現状況は概観できたが、それがどのように広がっていったかは今後の解明をまたねばならない。というのは「被成(なさる)」が使用される場合のその前の語に注目すると、古記録・古文書では「被成御下文」「被成官符」のような「文書を被成(なさる)」場合が多く、語彙的に偏りが見られる。それらが、室町後期の口語や近世初期の補助動詞「〜なさる」になるためには、語彙的な偏りをなくす必要がある。その点の考察は、室町期の古記録・古文書を調査して、今後考察する予定である。 3、 上記(1、2)の調査のため、本年は国立歴史民俗博物館と東京大学史料編纂所へ史料調査に赴き、用例の確認やデーターベースにて用例収集を行った。 4、 「被成{なさる}」の語彙的な広がりと共に、「(さ)せらる」の尊敬化についても抄物や古記録・古文書で調査を進め、「(さ)せらる」の尊敬化が古記録・古文書の文献で確認されることを考察する予定である。
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