1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610411
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 熊本大学, 教育学部, 助教授 (60253704)
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Keywords | 古記録 / 古文書 / 古記録・古文書の語法 / 「被成(なさる)」の補助動詞化 / 「(さ)せらる」の尊敬化 / 『天文日記』 / 『北野天満宮目代日記』 / 『お湯殿の上の日記』 |
Research Abstract |
平成十一年度は、平成十年度に研究した「『被成(なさる)』の系譜」をうけて、「被成(なさる)」の補助動詞化について、補助動詞の用例がいつ頃現れるかを調査した。平安・鎌倉時代の「被成(なさる)」はともに使用される語句が固定化している(例「被成御奉書」「被成下文」)が、徐々に「被成」の取る語句が広がっていき、室町後期になると色々な語句と結びつくようになる。(例「礼ヲナサル」「御感ヲナサル」)。その後、「被成(なさる)」には補助動詞の用例も見られるようになる。補助動詞化の例としては、『天文日記』1552年の「就被成」、『北野天満宮目代日記』1560年の「御取被成」等が早い例である。このことを「『被成(なさる)』の展開」と題して述べた。 次に、「(さ)せらる」の尊敬化について調査した。先の拙稿「『(さ)せらる』(使役+尊敬)の成立」(『訓点語との訓点資料』第九十六輯〔1995年〕)をうけて、「(さ)せらる」の尊敬化がいつ頃始まるのか、どういう文献に用例が見えるのかを調査した。まずは従来指摘されてきた「(さ)せらる」の所謂「二重尊敬」の例について検討した。それらの例は、誤解による指摘であったり、写本ができた年代での挿入例と考えられるものであった。「(さ)せらる」の尊敬例は室町後期の抄物類にも見えない。そういう中で古記録の一種といえる『お湯殿の上の日記』に用例が見える。尊敬化の早い例としては、『お湯殿の上の日記』永禄六(1563)年の「御かくらにならせらまし。」である。天皇の行為で自動詞に「(さ)せらる」がついている。『お湯殿の上の日記』では、この後から徐々に「(さ)せらる」の尊敬の用例が多くなることが判明した。
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