2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610413
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
屋名池 誠 東京女子大学, 現代文化学部, 助教授 (00182361)
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Keywords | 文字配列方向 / 書字方向 / 縦書き / 横書き / 右横書き / 左横書き / 行うつり |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き、頂相(禅僧の肖像)・大絵馬・初期洋式船図面・雑誌創刊号・新聞(県紙)・旧外地教科書・書籍・公共ポスターなどについて資料調査をおこなった。 過去3年間にわたる研究によって以下の点を明らかにすることができた。 1.中世から近代初期にかけて、右方へ行移りする特異な縦書きが広くおこなわれていた。肖像画の画賛において「肖像の向いている方向が読みはじめをしめす」という類型がまず生じ、ついで散らし書きの伝統と融合して「行頭が低くなる方向へ読む」という類型が生じた。 2.横書きはもともと日本語には存在せず、幕末になって生じた。右横書きが左横書きに先立ったわけではなく(近代以前の「右横書き」はすべて1行1文字の縦書きにすぎない)、両者はほぼ同時に出現した。横文字に憧れながらも外国語が読めない庶民が1行1文字の縦書きにならって右から左へと書くことによって生まれたものが右横書きであり、エリートたちが外国語の直接模倣によって生んだ左横書きとは、初期には担っていた人々が異なっていた。 3.現在も進行中の縦書きの左横書き化は、徐々に進んできたのではなく(1)明治初期(2)大正期(3)戦時中(4)終戦直後という四つの画期に劇的に進行した。 4.乗り物の横腹に進行方向から書かれる横書きは、幕末・明治初期に初期洋式船の船名表示から始まったと考えられる。
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