1998 Fiscal Year Annual Research Report
全国方言地図と文献との対照による助詞・助動詞の発達・伝播に関する研究
Project/Area Number |
10610415
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
彦坂 佳宣 立命館大学, 文学部, 教授 (00111237)
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Keywords | 方言 / 日本語史 / 意志 / 推量 / 活用型の統合 / 『方言文法全国地図』 |
Research Abstract |
『方言文法全国地図』の分布の解釈と方言文献を付き合わせて、以下の面の研究をした。 1、 九州地方の一・二段活用の五段化傾向 2、 西日本の活用類統合の動態 3、 東海地方の勧誘表現 4、 全国推量表現の研究 5、 全国意志表現の研究 1、2では活用型の変化を考察した。日本語史での九種から五種への活用型の統合過程が、近畿から中・四国では周圏論的に分布して対応するのに対して、九州では特異な面のあることを見た。九州は、1のように五段化するものと、二段を保持するものの二極化があり、日本語史の経過と違い、ナ変の五段化が二段活用より早く進む面が見られた。ナ変の五段化の要因は九州独特の音韻傾向のため、二段の保持は旧来の意志形「起キュ-」などウ韻が関与すると考えられた。この九州の特異性を理解すれば、西日本の活用型の変化の説明がよく付けられると考えた。 3、4、5では、意志・推量関連の助動詞の分布と歴史を考察した。意志表現は、それぞれ助動詞ベシ、ウズ、ウ・ヨウなどによる方言があり、ベシは東日本に、ウズは中部地方に、ウ・ヨウは関東中央および近畿にあること、この内ウ・ヨウは一段・二段活用に承接する際のヨウの分化度が地域によって異なり、近畿と関東中央では早く、中国・四国は遅くて「起キュ-」「起キョ-」など拗音の過程を保つこと、九州では拗音ながらまたオ段長音の開合の区別を保つなど方言差と日本語史との対応関係を見た。 5では、さらにこれらの助動詞からヤロ-・ジャロ-など意志形と区別する推量形式の成立の模様を見た。
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[Publications] 彦坂佳宣: "九州における一・二段活用の五段化" 『佐藤武義先生退官記念論集(仮名)』所収. (印刷中)
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[Publications] 彦坂佳宣: "彦坂 佳彦 西部日本の活用型統合の由来をさぐる" 日本方言研究会 第67回研究発表会・発表原稿集. 59-66 (1998)
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[Publications] 彦坂佳宣: "東海地方における勧誘形式の分布とその由来" 『春日正三先生退職記念論集(仮名)』所収. (印刷中).
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[Publications] 彦坂佳宣: "全国推量表現の分布と歴史-GAJ「書く」「高い」を中心に-" 国語研究. 62号. 5-22 (1999)