1998 Fiscal Year Annual Research Report
初期歌舞伎と沖縄の組踊-大名屋敷における歌舞伎上演を回路として-
Project/Area Number |
10610437
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
武井 協三 国文学研究資料館, 研究情報部, 助教授 (60105567)
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Keywords | 組踊 / 初期歌舞伎 / かづら桶 / 玉城朝薫 / 座敷芝居 / 家譜 / 弘前藩庁日記 / 荻野澤之丞 |
Research Abstract |
沖縄の組踊と初期歌舞伎の間に密接な関係があることを実証するのが、本研究の目的である。 ここで「初期歌舞伎」というのは、寛文・延宝期(1661〜1680)のいわゆる野郎歌舞伎の時代を中心に置いている。享保期(1716〜1735)に玉城朝薫によって創始されたという組踊とは、半世紀近くの時間的径庭が存在している。この時間的径庭は、大名屋敷での歌舞伎上演という視点を中におくことによって解決していこうとしている。従って、本研究の資料としては、主として、沖縄県の諸機関に所蔵される『家譜』という近世の記録、大名家の歌舞伎上演をしばしば記録している弘前市立図書館に所蔵される『弘前藩庁日記』を用いる。また、現在上演されている組踊も、有益な資料を提供してくれるものと思われる。 当該年度は『弘前藩庁日記』の宝永期(1704〜1710)の「江戸日記」96冊の調査を行い、数件の歌舞伎・浄瑠璃関係記事を発見することができた。この時期から日記の記述量が増加しているため、次の正徳期の調査は次年度に繰り越さざるを得なかった。ただ、記述量が増加しているだけに、歌舞伎・浄瑠璃の上演記事も詳細で、荻野澤之丞という役者の引退時の動向など、組踊との直接的な関係は薄いが、若干の歌舞伎史上の新事実も発見することができた。また、沖縄県立芸術大学の楽劇科の実習として行われる組踊の舞台上演に立ち会い、演技・演出・衣裳・小道具の調査を実施した。とくに、登場する大名の腰掛ける小道具は、初期歌舞伎の舞台に登場する事が絵画資料でわかっている「かづら桶」と共通することが知られ、注目されるものであった。
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