1999 Fiscal Year Annual Research Report
西夏文字資料による中国近世語史研究の可能性に関する基礎的研究
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10610439
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 秀明 筑波大学, 現代語現代文化学系, 助教授 (60168995)
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Keywords | ハラホト文献 / 文海宝韻 / 写本音同文海宝韻合編 |
Research Abstract |
前年度に続き,基礎資料の収集では『俄蔵黒水城(ハラホト)文献』をはじめとする関係資料の収集を進めている。本年度の研究の成果として,史金波教授の指導のもと,前年度から取り組んでいる上述文献の第7巻所収の「文海宝韻」の総合研究が刊行の運びとなったことが挙げられる。前年度は研究の概略だけが示されたが,今年度は索引を充実させ,写本『文海宝韻』全体の翻字と解釈も行い,報告者は現在望みうる最高水準の研究書の編集に参加することができた。 史金波教授は昨年8月末に帰国されたが,帰国前の2ヵ月を利用して西夏文字学習会を主催し『類林』の冒頭部分や『文海宝韻』序などを講義された。報告者は講義を聴講するとともに,西夏文子の代表的な文献である『番漢合時掌中珠』『文海宝韻』『五音切音』の3冊の序文を『夏漢字典』を用いて,翻字と解釈という基礎作業を行った。また断片的な研究であるが『写本音同文海宝韻合編』という資料読解の基礎作業も行ったが,どちらも活字として発表するにはいま少し時間が必要なので,研究を継続したい。 本年度の成果のもう一つは,西夏文字研究普及のための編集に取り組んだことである。常用と思われる西夏文字を品詞別に300字ほどを精選し、漢字による解釈や再構音や成立要素の解説を付した『西夏文字小辞典』,さらに銅牌・銅銭・『論語』『孫子』や仏典の訳書・石碑・仏塔など西夏文字が残る西夏文物を漢字による解釈を付して紹介する『写真でみる西夏文字』という2種の基礎編纂を終えている。
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