1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610456
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
市川 真理子 茨城大学, 教育学部, 助教授 (80142785)
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Keywords | 舞台 / ト書き / 登場 / 退場 / テクスト |
Research Abstract |
特に重要であるグローブ座、フォーチュン座、ローズ座で上演された劇の登場と退場を重点的に分析しながら、並行して入手可能な劇テクストも随時分析を行った。いずれの劇場で上演された劇テクストにせよ、登場や退場とは、単に舞台背後のドアから出入りするという瞬間的な行為ではなくて、ドアと演戯の場である舞台中央ないしは前部との間の動きであった、ことを示唆する例を含んでいることが確認された。したがって時としては非常に複雑な動きとなることもあり、例えば‘Entar〜aloof/after off'などは、登場後すぐには演戯の場に進まず、しばらくドアの近くに控えていたり、あるいは舞台の屋根を支えて柱の蔭に隠れるという動きを指示するト書きであると考えることができる。(この考察については、日本シェイクスピア協会の大会におけるセミナー「グローブ座再建」で発表した。)また、作者の原稿を印刷所原本とするテクストにせよ、上演用台本から派生するテクストにせよ、演戯の場の中心である舞台中央部や前部からはずれた部分(柱の蔭やドアの近く)を時として‘off stage'として見なす例を含んでいることも発見した。「登場」と「退場」は絶対的な概念ではなく、あくまでも主たる演戯の場との相対的関係で成立する意味を有する語でもあったということが確認された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Mariko Ichikawa: "Time Allowed for Exits in Shakespeare's Plays" Japanese Studies in Shakespeare and His Contemporarics. 25-45 (1998)
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[Publications] Mariko Ichikawa: "Overlapping Exits and Entrances in Shakespeare's Plays" Hot Questrists after the English Renaissance. (1999)
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[Publications] Andrew Gurr: "Staging in Shakespeare's Theatres" Oxford University Press (予定), (1999)