1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610458
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
牛江 一裕 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (10134420)
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Keywords | 統語構造 / 不確定性 / one照応 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自然言語の統語構造における不確定性の存在を実証的に検証し、そのような構造の不確定性自体を明確に捉え、適切な範囲でそれを可能とする文法理論を構築することにある。本研究では、主に英語を対象としてそのような統語構造の不確定性について実証的に研究を進め理論化を行おうとした。 今年度は3年計画の1年目として、研究を進める上での基盤とするべく、これまでの理論とデータの収集・整理・検討に重点をおいた。具体的には、生成文法においてこれまでなされてきた研究の中から、特に本研究の対象である構造の不確定性と関連性を持つ統語構造に関する記述を抽出整理し、その理論的・経験的問題点を明確化するよう試みた。さらに、最近のMinimalist Programに基づく理論的・実証的研究を検討し、その統語構造の取り扱いに関する問題点を整理した。また、現代英語の実際の言語資料により、本研究に関連し記述・説明されるべき種々の事実関係をできるだけ詳細に調査した。 理論化に関してはまだ緒についたばかりであるが、今年度の具体的成果としては、名詞句内での照応表現であるoneがどのような部分を先行詞としてしてとりうるか、特に先行詞が表面上不連続であるような場合にどのような可能性が許されるのかを考えるとき、その条件として平行的な構造を考えることが有効であり、その点で統語構造の不確定性と密接な関係があることを示した。このことは、文はひとつの派生段階では単一の統語構造を持つという、従来の統語分析で仮定されてきた確定的な統語構造観とは異なり、統語構造に不確定な部分があること、つまり、文はひとつの派生段階において単一の統語構造ではなく、複数の構造を同時に持つ可能性があり、それらの構造が相互に影響を及ぼしあう可能性を認める理論をたてる必要性を示唆したことになる。
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Research Products
(1 results)