1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610471
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 純子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30253024)
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Keywords | アメリカ文学 / 児童文学 / 男性性 |
Research Abstract |
まず、アメリカの代表的な思春期小説The Choco1ate War(1972)にみる男性性の変化を研究した成果を、Children′s Literature 28(Yale UP/MLA)に“The Quest for Masculinity in The Chocolate War:Changing Masculinity in the 1970s"として発表した。(平成7、8年度の科研費助成金での成果) 上記の研究の延長線上で、思春期の若者を描くJohn KnowlesのA Separate Peace(1957)を取りあげ、The Catcher in the Rve(1952)、A Rebel Without a Cause(1955)など、思春期の若者を扱う文芸・映像文化の文脈で研究した。『人間文化研究』第7巻(広島大学総合科学部紀要)に研究結果を「A SeparatePeaceにおける男性性のゆらぎ--50年代アメリカの不安、皮肉、逆接の自画像」として発表した。本論文では、この思春期小説でテーマ「無垢」(innocence)と「平和」(peace)の相克が、単にアメリカ文化内での「無垢の終焉」を意味するばかりか、帝国アメリカの国内外の政治と深く関わっており、同時にアメリカの中心勢力WASP男性の男性性の課題でもある、という知見を得た。 さらに、帝国アメリカの男性性の表象として、L.Frank BaumのThe Wizard of Oz(1900)の男性の登場人物に焦点を合わせ、世紀転換期のアメリカ社会、経済との関連から、不安を訴える「男性」を研究した。この研究成果は、『欧米文化研究』第5号(広島大学大学院社会科学研究科紀要)に「夢の国の陰で-『オズの魔法使い』の悩める男たち」として発表した。 以上の三作品ではWASP男性の男性性を体言する登場人物をアメリカ社会・文化の文脈で分折した。これらの作品では共通して、WASP男性に脅威、不安を与える人種的、性的「他者」が見えかくれする。平成11年度の研究では、黒人作家Walter Dean Myersの作品を取り上げて、人種的他者、ベトナム戦争と男性性、スラム街での暴力と男性性の関係を探る。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Yoshida,Junko: "The Quest for Masculinity in The Chocolate war:Changing Maswlinity in the 1970s" Children‘s Literature. 28. 105-122 (1998)
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[Publications] 吉田純子: "夢の国の影で-『オズの魔法使い』の悩める男たち" 欧米文化研究. 5. 211-225 (1998)
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[Publications] 吉田純子: "A Separate Peace における男性性のゆらぎ-50年代アメリカの不安、皮肉、逆説の自画像" 人間文化研究. 7. 243-280 (1998)