1998 Fiscal Year Annual Research Report
日系カナダ文学におけるエスニック・アイデンティティの探求
Project/Area Number |
10610474
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Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
檜原 美恵 広島女子大学, 国際文化学部, 教授 (70181112)
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Keywords | 日系カナダ文学 / アイデンティティ / マルティカルチュラリズム / ポストコロニアリズム / リドレス運動 / ジョイ・コガワ / ロイ・キヨオカ / ヒロミ・ゴトー |
Research Abstract |
今年度の科学研究費により、埋もれていた作品も含めて日系カナダ文学作品を可能な限り収集することができた。また、バンクバー、ウィニペグ、そしてトロントに赴くことにより絶版になっていた文献の閲覧をすることができただけでなく、日本で日系カナダ文学者として広く知られているジョイ・コガワに続く若手の作家が現在カナダの文壇で予想以上に活躍し、日系カナダ文学が活況を呈している様子を知ることができた。そして、現地での日系カナダ人、および日系カナダ文学に対する多面的な見方を知ることができ、カナダのマルティカルチュラリズムの文化状況における日系カナダ文学の全体像を大雑把にではあるが掴むことができた。 収集できた多数の文学作品や文献・資料を現在読み進めているが、インター・マリッジにより日系カナダ人のアイデンティティ認識が薄まっていく傾向が一般的に見られる中で、若手の作家の文学作品の中に意外にも日系人としての意識を収容所の歴史を溯って考察しているものがあることが発見された。詩人として芸術的に高く評価されているロイ・キヨオカ、若手のヒロミ・ゴトー、新進のケリー・サカモトの作品を巡る論文を申請者は現在執筆中である。 申請者は立命館大学「日系文化研究会」で行われている「ジョイ・コガワ研究」でのディスカッションに積極的に参加し、「リドレス運動から再定住まで」のプロジェクトで意見交換を行ってきており、来年度以降の研究継続の基盤を築くことができた。同時にマイクロフィルムで日系人のアイデンティティを問題視した作品・論評の収集も進めており、来年度さらにその作業を進めることにより、現代の作品に現れたアイデンティティ認識との比較・考察を行う。
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