1999 Fiscal Year Annual Research Report
日系カナダ文学におけるエスニック・アイデンティティの探求
Project/Area Number |
10610474
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Research Institution | Kyoto Women's Junior College |
Principal Investigator |
桧原 美恵 京都女子大学短期大学部, 教授 (70181112)
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Keywords | 日系カナダ文学 / アイデンティティ / マルティカルチュラリズム / リドレス運動 / ポストコロニアリズム / エスニシティ / ジョイ・コガワ / ロイ・キヨオカ |
Research Abstract |
昨年度、および今年度の科学研究費により収集することができた多数の日系カナダ文学作品や文献・資料を読み進めつつ、申請者は日系カナダ文学に表わされたアイデンティティの問題とカナダ文学における日系カナダ文学の位置付けを中心にして考察を進めている。Books in Canada誌やCanadian Literatureなどのバックナンバーを遡り、日系作家、および作品紹介・書評に当たった。また、日系カナダ人を取り巻く歴史的諸現象との関連で日系人のアイデンティティがどのように現れているかを知るために、the New Canadian新聞のマイクロフィルムを調べているところである。 ジョイ・コガワやロイ・キヨオカなどの二世作家にとって収容所を体験することによって、アイデンティティの問題は切実になった。二世作家の文学作品には、こうしたアイデンティティの葛藤が色濃く描き出されている。マルティカルチュラリズムのカナダにおいて若い世代の日系作家たちは、二世作家たちのような文化の衝突を問題視するのではなく、複眼的視点で重なり合う文化を作品の中に取り込んでいく。アイデンティティの揺れに葛藤を抱くのではなく、アイデンティティをずらしながら変容を遂げていく姿を映し出す場合がある。ヒロミ・ゴトーのChorus of Mashroomsを取り上げて、「語りの手法」とアイデンティティの問題について立命館大学「日系文化研究会」の七月例会において研究発表を行った。また、三月下旬に開かれる「日系文化研究会・合宿」において「カナダ日系文学」と題して口頭発表を行うことになっている。来年度もこうした研究会に積極的に参加し、研究の視点を深めるとともにマイクロフィルムで作品や批評の収集を進めつつ、さらなる作品分析を行っていく。
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