1999 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・グレイによるイギリス詩史執筆の試み…18世紀古詩復活に果たした役割
Project/Area Number |
10610480
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 大阪経済大学, 経営学部, 助教授 (50183778)
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Keywords | トマス・グレイ / ジェイムズ・マクファーソン / トマス・ウォートン / ジェイムズ・ビーティ / トマス・パーシー / 18世紀 / 古詩復活 / イギリス詩史 |
Research Abstract |
平成11年度はグレイがイギリスの詩史を研究するにあたり、文学および文化に対して当時抱いていた問題意識を検討した。彼はピンダリック・オードで詩の起源を古代や古典の時代に求めているが、なぜギリシャ・ローマの古典世界だけでなくイギリス土着の古代詩にも大きな関心を寄せたのか、を当時の伝統的な文学概念と比較・考察した。まずRene WellekのThe Rise of English Literary Historyを基本文献に、イギリス詩史の概念がいつ頃どのような議論によって形成されてきたかを概観した。年度後半ではエヴァンスとパーシーとの交流を中心にグレイの古詩研究の実態を調べた。 本年度は、グレイがいち早く認め評価を与えたマクファーソンに関する二編の論文を公表した(別記参照)。特にイギリス・ロマン派学会における口頭発表をもとに、同学会誌に掲載された「叙景詩『六人の詩人たち』-マクファーソンによるもうひとつの古詩断片」では従来見過ごされていた断片詩を取り上げ、描写の特質を18世紀後半における自然詩の流れのなかで検討し再評価を試みた。 他に調査・研究のためイギリスに海外出張した。古詩研究では資料としてグレイの書簡だけでなく備忘録が重要であるが、出版されていないため、ケンブリッジのペンブローク学寮に赴き草稿を直接閲覧した。出張の後半ではマクファーソン関係の資料をグラスゴー、及びエディンバラ大学で調査・収集した。今回の出張では不充分ながらも、ロマン派及び18世紀後半のイギリス文学をテーマとする講演や研究発表を聞く機会に恵まれ有意義であった。 最後にコンピュターのコンコーダンス作成では、作品の編集をほぼ終えることができた。書簡集は本年度も編集作業を継続したが、大部であるため十分入力作業を終えるに至っていない。これについてはテーマの研究を進めながら最終年度に完成を目指す予定である。
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Research Products
(2 results)