2001 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ語・オランダ語・フリジア語の対照文法記述 -西ゲルマン語類型論に向けて
Project/Area Number |
10610491
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
清水 誠 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40162713)
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Keywords | ドイツ語 / オランダ語 / フリジア語 / 対照言語学 / 言語類型論 / ゲルマン語 / 西ゲルマン語 |
Research Abstract |
今年度は、西ゲルマン語類型論の発展として、ゲルマン語全体を視野に含む展開研究を行なった。すなわち、北欧スカンジナヴィアの北ゲルマン語と西ゲルマン語を比較し、デンマーク・ユトランド半島東部以北の北ゲルマン語に特徴的な後置定冠詞の類型論的特徴について、日本言語学会第122回大会(2001年6月24日一橋大学)で研究発表を行なった。同研究発表は別記論文として発表した。これは北ゲルマン語の後置定冠詞が同言語にかんする最近の代表的な概説書の記述と異なって、屈折語尾(inflectional ending)ではなく、接語(clitic)であることを明らかにしたものである。これは、西ゲルマン語と違って後置定冠詞が発達した理由を接語語化(cliticization)と語形成的制約に求めることによって、本研究の発展的成果としてとらえられる。 研究費の活用としてもっとも意義が深かったのは、海外旅費によって8月から9月にかけてオランダ・ベルギー・ルクセンブルクに出張し、フローニンゲン大学をはじめとするフリジア語・オランダ語研究者と研究成果について議論を行なったことである。加えて、今回はルクセンブルクでルクセンブルク語の広汎な資料収集が可能になった。同言語は1984年の言語法によって西中部ドイツ語方言から独立の言語に昇格したもっとも新しいゲルマン語であり、言語構造からも社会言語学的観点からも、ベネルクスの西ゲルマン語としてきわめて興味深い性格をもっている。これまで日本ではほとんど関心が向けられず、資料的にも何も情報が得られなかった同言語にかんする研究状況がおおまかに把握できたことは、最終年度を迎える本研究にとって意義深い収穫をもたらした。国内での研究者がほとんど皆無であり、文献情報がきわめて乏しい本研究分野にとって、海外旅費の活用は必要不可欠な使用用途であり、今年度もこれを積極的に活用したことが、本研究成果に最大の貢献をもたらしたといえる。
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