1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610495
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
有川 貫太郎 名古屋大学, 言語文化部, 教授 (90033232)
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Keywords | ラオーコオン群像 / レヘニズム美術 / ペルガモン神殿 / プリニウス / ルードヴィヒ・ポラック / ヴェルギリウス / レッシング |
Research Abstract |
1)ラオーコオン群像の成立について、従来の諸研究をふまえながら、最も妥当と思われるベルナルト・アンドレーエの説を詳細に検討した。とくに、その主張の根幹をなす、ヘレニズム期の小アジア・ペルガモンにおけて原像が成立した、とする点について、様式、当事の政治史との関連のなかでその妥当性を検討した。さらに、ヴァティカンの像がその原像の大理石コピーである、とする点もさまざまな観点から検討した。 2)ラオーコオン像について記したプリニウスの「博物誌」のテクストについて、解釈上の問題点を概観した。 3)ラオーコオン像の再発見(1506年)については、その場所については不明確とされている。諸種の研究を参考に、これを可能な限り確定する試みを行った。 4)ラオーコオン像の、欠損していた右腕を発見したユダヤ系美術商、ルードウィッヒ・ポラックについて、その生涯を略述し、「ラオーコオン」問題は20世紀におけるユダヤ人迫害の歴史とともに関連していることを示した。また彼の論文「ラオーコオンの右腕」を翻釈して、発見の経過を明らかにした。またこれは、ラオーコオン像の修復に関わる問題点を示すことにもなった。 5)古代世界でラオーコオンをもっとも詳細に記述したのはヴェルギリウスの「アエネーイス」である。そのテクストから、ローマ建国神話におけるラオーコオン像の意味づけを読み取る試みを行なった。 6)レッシングの「ラオーコオン」において、その論説を支える多くの問題のなかから、2点について従来の研究成果を検討し、この著作の美術史的、文献学的側面をを紹介した。 7)古典研究上の、インターネットから得られる情報を最も概観できる形で紹介した。
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