1999 Fiscal Year Annual Research Report
ロマンス諸言語における音形の伝播と拡散のメカニズムに関する総合的研究
Project/Area Number |
10610507
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
北村 一親 岩手大学, 人文社会科学部, 助教授 (80234277)
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Keywords | ロマンス語 / イタリア語 / フランス語 / 音変化 / 言語変化 |
Research Abstract |
今年度は,主に中部ロマンス語および西部ロマンス語の一部(東端)におけるラテン語子音連続CT/kt/の変化を扱った。中部ロマンス語では、イタリア語の北部諸方言および中南部諸方言のラテン語子音連続CT/kt/の変化を考察した。イタリア語の北部諸方言のヴェネト方言において現在では/t/で現れるラテン語子音連続CT/kt/の変化形が、13〜14世紀の初めの文献において/it/で現れることを確認すると共に、/t/と/it/の共存から,ヴェネト方言における/kt/>/it/>/t/という変化が生じたことと,13〜14世紀が/it/>/t/の変化時期であることを認定した。ロンバルディア方言では/kt/>/it/>/c/>/t∫/という変化系列が基本となり、これらの諸々の変化形がロンバルディア方言の下位方言に混在することと、この変化系列とは別種の/t/という変化形が存在することを再確認した。ピエモンテ方言ではすでに古文献において/it/と/c/(または/t∫/)が見られ,現代の方言でもトリノで/it/と/t/が併存しており,カナヴェーゼ地方やモンフェラート地方で/t∫/が現れ,ヴァルセシアでは/c/が見られる。エミリア・ロマーニャ方言では、ボローニャに代表されるように/t/であり,古文献でも常に/t/を示すが,エミリア方言の一部には/it/や/t∫/も散見される。リグリア方言においては、現代のサンレモにおける変化形と同じく古文献において/it/と/t/が共存するが,他の地方では/t/であり,/it/>/t/という変化が考えられる。 西ロマンス語の東端に位置するフランス語におけるラテン語子音連続CT/kt/の変化形は,すでに古文献の時代から/it/を示しており,現代語において/it/以外の変化形を有する語は,多くの場合,起源的にCT/kt/>/it/であったものが音声的改変によって変化したものである。
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[Publications] 北村 一親: "フランス語歴史音声学覚書"アルテス リベラレス. 64. 1-10 (1999)
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[Publications] 北村 一親: "イタリア語諸方言におけるCTの変遷の諸相"アルテス リベラレス. 65. 1-16 (1999)
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[Publications] 北村 一親: "ロマンス語文献学・言語学導論"ロマンス語学論集. 1. V-VII (1999)
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[Publications] 北村 一親: "Notioitalika Ellenika研究に関する覚書"ロマンス語学論集. 1. 67-72 (1999)