2000 Fiscal Year Annual Research Report
古代ロシア文語の萌芽期における特性の研究-「アルハンゲリスク福音書」を中心として
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10610510
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
岩井 憲幸 明治大学, 文学部, 教授 (60193710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 文昭 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80228494)
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Keywords | アルハンゲリスク福音書 / オストロミール福音書 / 古代教会スラブ語 / 古代ロシア語 / 東スラブ語 / ロシア語史 / スラブ文献学 / メノロギオン |
Research Abstract |
本年度はまずはじめに前年度にパソコンに打ち込みを終了した本文を校正した上で,その修正作業を行なった。この修正本文によりパソコンを使ってまず正順の語彙索引の作成を試みた。スペースのあきによって1単語と認定することを基本としたプログラムを開発し,索引作成を試みたところ,次のような問題点が明らかとなった。1)当然ながらホモニムは峻別できない。例,接続詞のИと3人称代名詞・男性・対格のИ,さらに形容詞長語尾・男性の-И。2)再帰代名詞〓のつく動詞はそれぞれ別々の1語と認定されてしまい,不都合。3)小詞ЖЪが前の語につくかつかぬかの区別が不統一。これらはいずれも最終的にはテクストの読みに還元される問題であり,それぞれ個別に解決をはからなければならない。次にメノロギオン部分(f.123-f.178v)について検討し以下の点を明らかにした。1)本メノロギオンは『オストロミール福音書』とも『ムスチスラフ福音書』とも『プゥトナ福音書』とも異なり,孤立している。2)カレンダー部分の聖人名等においていくつかの誤りがみられる。3)本文ではシュナクサリオン同様次のようなrusizmが特徴的である:(1)ЮСЫは文字としてのみ存在。(2)jersはおおむね正しい。(3)子音間の流音+jerは東スラブ語的。(3)〓を時に〓と綴る。(4)動詞3人称語尾は-Tb。(5)名詞の男性・単数・造格は-ZMb。(6)oyの文字は時にyないしvと綴る。4)カレンダー部分における聖者名のうち〓に終わる男性および女性名詞の格変化において擬似的な生格とも称すべき格形の混乱が若干生じている。いずれにせな。5)『アルハンゲリスク福音書』においてメノロギオンのカレンダー部分が,もつとも強く東スラブ語的要素を有していると結論づけられる。
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