1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610513
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 雄二 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (10135486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 総合人間学部, 教授 (60129947)
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Keywords | フランス語 / 照応 / 談話 |
Research Abstract |
本年度は主として映画のシナリオから得た会話フランス語の資料の分析を行なった。会話フランス語のなかで用いられている指示表現(定名詞句、不定名詞句、固有名、人称代名詞、指示代名詞、etc.)を取り上げて、その出現位置(主語、目的語、前置詞の目的語、転位位置、etc.)ごとに統計を取った。その結果、次のことが明らかになった。i)主語位置での名詞句の出現頻度は低い ii)名詞句は転位されことが多い iii)照応表現としては人称代名詞よりも指示代名詞が多い 本研究の目的である談話処理における照応過程を明らかにするためには、上記のような表層の統語的分析だけでは十分でない。このため資料の分析と平行して、理論的構築を行なった。談話のなかでの指示対象同定と確立を分析するためには、一種メンタル・モデルである談話モデルの構築が必要であり、その成果として「談話モデルと指示-談話における指示対象の確立と同定」(『京都大学総合人間学部紀要』第6号、1999)という論文にまとめた。この過程で明らかになったのは、名詞句や代名詞による指示と照応の問題に迫るには、表層の統語的分析だけでは不十分で、よりミクロの談話世界の一貫性を考慮する必要があるということである。本稿では談話世界の一貫性を保証する要因としてi)主題の一貫性 ii)視点の一貫性 iii)時の一貫性 iv)スペースの一貫性 があることを明らかにし、このうちi)とiv)を中心に考察した。 本年度の研究の過程で特に明らかになったのは、指示と照応の問題を考えるには、より認知的アプローチが必要だという点である。
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