2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610513
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 雄二 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (10135486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 総合人間学部, 教授 (60129947)
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Keywords | 照応 / 指示 / 談話 |
Research Abstract |
本年度は昨年度の成果を踏まえて、主として談話における指示対象構築の過程に関する理論的研究を行なった。談話は発話行動の単位であるが、これは話し手と聞き手の相互行為として、時系列に沿って構築されるものである。従来、指示の問題はFregeに端を発する分析哲学においてさかんに議論されてきたが、この立場においては言語表現(の意味)と現実世界の指示対象を直結して考えることが多い。しかし、実際に談話における照応過程を研究すると、言語表現(の意味)と現実世界(外延世界)とのあいだに、心的モデルmental modelを介在させる必要性が明らかになる。本研究ではそれを談話モデルdiscourse modelと名付け、談話モデルにおける指示対象discourse referentの構築と照応過程の関係について、詳細な分析を行なった。なかでも不定名詞句が談話に新規指示対象を導入するメカニズムを中心に考察し、従来量化表現(quantifier)であるとされてきた不定名詞句は、単に変数を導入するだけであり、それは談話的量化子(discourse quantifier)に束縛されると考えるべきとするHeimらの主張を確認する成果を得た。 その成果は平成12年5月に早稲田大学で開催された日本フランス語学会例会において、「Elle est morte al'hopital.型の定名詞句指示-内包、外延あるいは第3の道」という題名で発表した。これは論文として『フランス語学研究』35号(平成13年6月刊行予定)に掲載される予定である。またもうひとつの論文「定名詞句の「現場指示的用法」について」を、『京都大学総合人間学部紀要』(平成13年11月刊行予定)に投稿中である。
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