2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610513
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
東郷 雄二 京都大学, 総合人間学部, 教授 (10135486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 総合人間学部, 教授 (60129947)
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Keywords | 指示 / 照応 / 談話 |
Research Abstract |
本年度は研究期間の最終年度であり、研究開始から作成したフランス語コーパスを用いた照応過程の研究の総括を行った。フランス語における代名詞照応・代名詞指示の現象を十分に解明するためには、表層上の「先行詞-照応詞」モデルでは不十分であり、話し手と聞き手の双方に一種の心的モデルである「談話モデル」を設定する必要があることは、昨年度までの研究により明らかになった。本年度はこのモデルの有効性を検証するために、考察の対象を広げ、ひとつは定名詞句のいわゆる外部指示用法の分析を行なった。英語ではShut the door.のような定冠詞theの用法を外部指示用法と呼んでいるが、実際にはこれは話し手・聞き手の談話モデルに格納された認知フレームが発話状況に重ねあわされ、その結果存在前提を生じたものであり、いわゆる連想照応とよく似たメカニズムであることを示した。またもうひとつは日本語の指示詞コ・ソ・アのいわゆる文脈指示用法を分析し、話し手と聞き手の共有知識の想定が不可欠であることを実証した。文脈指示ではアは用いられず、アがさすのは共有知識領域に登録された指示対象である。共有知識の想定は無限遡及に陥るとしてしばしば批判の対象になってきたが、指示と照応の問題を解明するには、話し手と聞き手の共有知識を想定することが必要であり、このことを日本語の指示詞と、英語やフランス語の定冠詞のいわゆる外部指示用法の分析により示すことができた。
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Research Products
(2 results)