Research Abstract |
本年度は,次の諸点の具体的・実証的研究に取り組んできた:(i)本研究の基盤を成す他動詞(TR)および非能格自動詞(UER)の語彙概念構造(LCS)を,それぞれの主要なタイプごとに,検証する;(ii)それぞれのタイプのLCSと結果述語(RC)及びWay構造がどのように繋がっているのかを,論証する;(iii)(ii)のLCSでの表示は,どのような統語構造(SS)表示に写像されるか,また,それはどのような一般性のある規則により行なわれるのか。 まず,(i)では,TRに関しては,意味的・統語的振舞いの相違から,(1)接触・打撃の他動詞と(2)状態変化の他動詞に分けることができること,UERに関しては,主として,運動タイプと発出タイプに区分できる。そして,それぞれのLCSにおける異同は,下位事象構造の第一の項や場所の項が,変項であるのか,定項であるのか,被束縛項か,といった要因により,生じていることを明らかにした。 (ii)に関しては,まず,(2)のRCと(1)のRCでは異なる構造をもつ。前者は,GO関数中の経路が等位構造を成しているのに対し,後者はGO関数自体が等位構造を成している。そして,UERのRC構文も,項の性質の違いを除けば,後者のLCSと基本的には同一の構造である,と分析した。また,Way構文もRCをとるUERの場合と,基本的には同一のものであるとの,考察結果を得た。 (iii)に関しては,(2)のRC構造が写像されるSSは所謂三項構造,(1)のそれが投射されるSSは[V-NP-SC],UERのRCの対応するのはSC構造,との分析結果に達した。また,これらの構造からSSへ導くlinking rulesに関しても,新たな提案を行なった。 上記の研究成果の一部は,紀要論文において公表したが,残りについても近日中に発表予定である。
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