1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610518
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
宮畑 一範 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (20229876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 健 神戸松蔭女子学院短期大学, 助教授 (20259641)
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Keywords | 同時通訳 / 言語理解 / 概念構造 / 認知言語学 / 情報フロー |
Research Abstract |
同時通訳は、聴取と発話を同時並行的に行う点で特殊である。また、それが二カ国語間の翻訳を目的とすることから、一般の言語行動には見られない要因が含まれる。しかし、そのような表面的な特殊性にもかかわらず、原発言の聴取者としての通訳者が入力情報を処理する過程は言語理解一致に共通すると考えられる。むしろ、同時通訳における産出は人間の言語理解のプロセスを探る上で貴重な証拠を提供してくれる可能性がある。つまり、通常の言語理解をオンラインで観察しても、外からは何もわからないが、訳文として表出される具体的な反映を分析することによって、聴取者が理解している情報、内容をオンラインで確かめることができる。 本研究の研究活動は実際の同時通訳を文書化することに向けられている。素材としては、公共テレビ放送(NHK衛星放送)で流された生(ぶっつけ)の同時通訳を録画し、原発言(英語)とその訳文(日本語)の時間の流れにそって書き起こした。現在までに、26本、正味合計230分の素材を収集している。 得られた資料を観察すると、概念化された背景情報を通訳者が負担感なく訳出に取り込んでいる例、原発言によって表現されている状況を概念的に捉えることによって、原発言の統語構造にとらわれずに表現を再編成している例、入力情報を概念化して保持していることを示唆する語彙選択の例などが見られる。同時通訳における情報の流れをこのように認知言語学的に捉えることによって、言語理解の過程で働いている認知要素、概念要素を具体的に抽出できると考えられる。これらの知見をさらに理論的に考察することが来年度の課題である。
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