Research Abstract |
本研究が対象としている約1680篇の中世ポルトガル語叙情詩は,その大部分が,1)アジュダ写本(作品数310),2)リスボン国立図書館蔵写本(作品数1560),3)ヴァチカン図書館蔵写本(作品数1200)の三写本にまたがって伝承されているが,これらの詩篇に対応する写本上の箇所はすべて画像ファイルとしてデータ入力された.ファイルは圧縮されたJPEG形式にすると1画像あたり1)では500Kb前後,2)と3)では100Kb前後なので,5860画像すべてをあわせても1枚のCD-Rで保存できる.・画像データは1)写本内の位置,2)ジャンル,3)作者,4)作成推定年,5)詩形および韻律情報,6)写字生に関する情報および7)その他の専門技術的情報とともにリレーショナル化されている.詩篇のうち複数の写本にまたがって伝承されているものは,そのかなりのものがすでに転写されてテキストファイル化されている.特に,三写本に共通する54詩篇は,写本の伝承,テキストの読み,時代的な言語層を特定または考察するために最重要な資料であるので,単語,表現ごとの校合が可能な資料体としてまとめられた(研究成果報告書).これらは,上の画像を通した写本情報とともに,叙情詩のテキストについての,今後の分析,研究の基盤を形成するであろう. 以上,本年度の実施計画も含め,平成10年度から4ヶ年にわたる,この研究の目標は十分に遂行,達成されたと考える.この研究の過程で写本を画像ファィル化し,テキスト・クリティックの作業を進めていく上の手法が経験的に確立された.すでに,研究代表者は,特に13世紀から15世紀にかけての中世ポルトガル語散文研究の分野に応用させつつある.
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