1999 Fiscal Year Annual Research Report
ギリシア・ローマ文学における叙述技法の解明を基礎とする作品論研究
Project/Area Number |
10610536
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大芝 芳弘 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (70185247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 好則 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (50295458)
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Keywords | 西洋古典学 / ギリシア文学 / ローマ文学 / 叙述技法 / レトリック |
Research Abstract |
今年度は本研究の第二年次にあたり、昨年度以来続けてきた研究対象および研究方法についての基礎的調査に立脚して、代表的な個別作品について叙述技法の観点から検討を行った。ギリシア文学の分野に関しては、ホメーロス叙事詩(『イリアス』、『オデュッセイア』)に見出される様々な叙述技法のうち、登場人物の科白の中に過去の事件の描写を織り込む技法に着目して作品論研究を進めた。その成果の一部として、『オデュッセイア』において数回言及される木馬の策略の叙述が、作品構成の全体的な枠組みの中で果たしている役割について、研究分担者佐野好則による論文「『オデュッセイア』における木馬の物語」が出版された。ローマ文学の分野に関しては、共和制期からアウグストゥス時代にかけての代表的な韻文作家たちの諸作品に見出される叙述技法、特に修辞理論および文体上の諸概念との密接な関係に注目して考察を進めた。その成果の一部として、研究代表者大芝芳弘は、カトゥッルスの抒情詩第44歌について、文体上の概念を表す用語の使用に着目し、従来の研究において解釈上の難点とされてきた箇所に新たな解釈を施し、日本西洋古典学会第50会大会(平成11年5月、於東京大学)にて「カトゥッルスの弁論批判――第44歌をめぐって――」と題する口頭発表を行った。さらに、ギリシア文学とローマ文学の両分野にわたって、次年度における研究成果発表のための予備作業として、個別作品の注釈書・研究書・研究論文の検討を続け、本研究の進展についての計画に検討を加えた。また、新たに必要となる文献資料について、購入可能な文献資料の選定および他の研究機関が所蔵する関連文献の調査を進めた。その一環として文献調査のための研究旅行を実施した。
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