1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10620025
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
竹森 正孝 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (90111062)
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Keywords | 立憲主義 / 憲法裁判 / 連邦制 / 人権保障 / 地方自治 |
Research Abstract |
93年ロシア憲法制定以降、その定着と運用の過程でロシア連邦憲法裁判所は大きな役割を果たしてきた。立憲主義の確立という要請に真正面から応えてきたのは、ほかならぬこの憲法裁判所であった。本年度は、95年以降の憲法裁判所の判決・決定の分析を行い、連邦制にからむ「憲法戦争」と構成主体の憲法・憲章の合憲性審査、憲法上の人権保障と個別法の合憲審査、地方自治制度の導入と構成主体の地方自治法の合憲審査という3つの論点を中心に、憲法定着への歩みをフォローした。 この間の憲法裁判所の判決・決定を概観するならば、「憲法戦争」では、「独立志向」の強い、または93年憲法制定前に独自の憲法・憲章を制定した構成主体に対して連邦憲法の直接効力の意義を強調し、人権と地方自治では、ヨーロッパ人権条約とヨーロッパ地方自治憲章への加盟による外在的インパクトにも依拠しつつ、近代以降のヨーロッパの原理n定着を企図してきたところに特徴がある。 これらの検討作業の結果、立憲主義という視点から見て、憲法裁判所が、(1)憲法政治の実現への能動的役割を果たしていること、(2)世界における憲法裁判の現代的特徴である、人権保障機能と体制擁護機能(「憲法忠誠」などをつうじての)の融合過程がロシアにおいても顕著であること、(3)同時に体制転換過程にあるがゆえの「上からの国家秩序形成」という機能も重視されるべきことが明らかにされた。また、(4)市場経済体制への移行という政治的要請に迎合的で、(5)現政治体制および現政権の施策に対する合法性付与の機能も果たしている側面もある。総じて、憲法裁判のうち上記の3分野の判決動向を見ると、ロシアの立憲主義の成立において、それがどのようなものであれ憲法裁判所の果たす役割が決定的だといわなければならない。
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