1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10620038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉本 健一 大阪大学, 法学部, 教授 (80031863)
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Keywords | 非営利法人 / 協同組合 / 役員 / 民事責任 |
Research Abstract |
今年度は、まず非営利法人に関する法的諸問題の状況を探るために、わが国における判例を中心に研究を進めた。その際、とくに紛争が多く生じている協同組合に関する判例研究を行った。たとえば、大学の消費生活協同組合が完全子会社を設立してスーパーの経営に乗り出したが、子会社がその取締役の放漫経営めために倒産し、スーパーの取引先が親企業である大学生協の責任を追及した事例がある。この事例では、結論的に大学生協の責任は免れないであろうが、どのような法律に構成よるかが問題となる。株式会社の場合にも、わが国では法規定がないために、親会社の責任を認める法律構成は議論が分かれるが、親企業が生協の場合でも同様であり、結論としては、生協を子会社の事実上の取締役とみるのが適当であると考える。また、事業協同組合の組合員が脱退する際の持分計算に際しては、組合財産の評価は帳簿価額ではなく、協同組合の事業の継続を前提に、なるべく有利にこれを一括譲渡する価額を標準とすべきである、とする昭和44年の最高裁判決があるが、これを実際の事例に適用するには、困難が生じる場合も少なくない。たとえば、協同組合の事業目的が不動産の開発・売却であるときは、商品としての所有不動産の評価を時価ですべきか、開発費を控除すべきか、議論が分かれうる。そのほか、共同組合員の有限責任と経費の負担の関係など、多くの個別問題を検討しつつ、一般的な基礎理論の構築を目指したいと考える。
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