1998 Fiscal Year Annual Research Report
新「農業基本法」の課題と農地制度の展開方向に関する日仏の比較研究
Project/Area Number |
10620046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 純孝 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (50013016)
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Keywords | 農政改革 / 農業基本法 / 農地制度 / 農業生産法人 / EU共通農業政策 / フランス農政 / 条件不利地域農業 / 環境と農業 |
Research Abstract |
1. 農業構造問題の現況については、経営基盤強化促進法と特定農山村法の適用状況に着目し、現地調査をも踏まえて、以下の点を確認した。(1)市町村の基本構想に基づく認定農業者の数は累増しているが、認定された経営計画は必ずしも実体に即していない。(2)農地利用の集積は、法が予定した個別経営(法人経営も含む)によるだけでなく、集落営農等の協同組織による場合も多い。(3)地域の資源・農地管理と担い手対策を結びつけた取組みもあるが、なお少数である。(4)法人経営の発展と地域農業維持との間に軋轢が生じる場合もある。(5)総じて基盤強化促進事業の仕組みは、フランスの類似の制度に比肩しうる機能を担いえていない。(6)そのことは、中山間農業支援施策をEU・フランスの条件不利地域対策と比較した場合にも同様であり、さらなる政策展開の必要性を示唆している。 2. 農政改革の動きについては、以下の知見を得た。(1)基本問題調査会の答申と政府の農政大綱・政策プログラムを踏まえた新基本法案は、新しい諸課題を広く包摂してはいるが、経済効率性の要請と農業・農村の多面的機能維持の要請との調整の問題は未解決で、両面の政策の整合性如何は今後の具体的施策の内容如何による。(2)それは農地耕作者主義の緩和=株式会社の導入についても同様である。他方、(3)地方分権勧告に伴う農振法改正案は、政令・通達の内容を法律中に取り込むことにより、同旨の農地転用制度の改正とあいまって、農村部の土地利用計画に新しいインパクトを与える可能性がある(研究発表(2))。(4)米輸入の関税化措置と直接所得補償の導入がもたらす効果は未知数だが、その後者の発想は、基本法案上でみる限り、20年前のEUのそれに近いものである。 3. フランスの新「農業の方向づけの法律」案とEUの「アジェンダ2000」の審議状況は、98年秋の現地調査を踏まえた中間報告で発表中である(研究発表(1))。未確定の部分もあるが、農業・農村が環境面と社会・雇用面でもつ意義の強調、その上に立った農業予算の配分方法の見直しと直接所得補償の新しい仕組みの導入などが、とくに注目される。これらと日本の動きとの比較は、次年度の重要な検討課題となろう。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 原田 純孝: "フランスの新「農業の方向づけの法律案」を読む-EU農政の新展開を見通したその狙いと日本への示唆-(1)" 農政調査時報. 507号. 19-27 (1998)
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[Publications] 原田 純孝: "フランスの新「農業の方向づけの法律案」を読む-EU農政の新展開を見通したその狙いと日本への示唆-(2)" 農政調査時報. 508号. 44-55 (1999)
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[Publications] 原田 純孝: "フランスの新「農業の方向づけの法律案」を読む-EU農政の新展開を見通したその狙いと日本への示唆-(3)" 農政調査時報. 511号. (1999)
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[Publications] 原田 純孝: "「農業法学会1998年度シンポジウム」の松本報告「土地利用計画規制制度の改善方向」への「コメント」" 農業法研究. 34号. (1999)
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[Publications] 原田 純孝: "フランスの農業構造・経営対策・担い手対策、それを支える農地制度から何を学ぶか" 京都府農業会議「農政研究資料」. 98-102合併号. 22-62 (1998)
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[Publications] 原田 純孝: "フランスで新農業基本法案-わが国との相違は-" 全国農業新聞1998年8月7日. (1998)
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[Publications] 原田 純孝: "フランスの農業経営構造改善センター(CNASEA)とは何か(CNASEA,Plaquette de Presentation,fevrier 1997の翻訳)" 全国農業会議所, 119 (1998)