1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10620054
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
川崎 英明 東北大学, 法学部, 教授 (30127485)
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Keywords | 再審 / 証拠構造論 / 適正化 / 可視化 / 合理的疑い |
Research Abstract |
本年度は、第一に、昨年度からの継続課題として、再審における訓拠構造論の通常手続への適川可能性を刑事弁護の実践を踏まえて検証すること、第二に、そうした適川可能性が当事者主義の訴訟構造の下に理輪的正当性をもちうることを比較法的視点から検証することを、研究計画の主眼とした。 第一の点については、昨年度に引き続き刑事弁護に精通した弁護士へのインタヴュー調査を通して、証拠構造論の活用によって裁判官の自由心証の過程が可視化・客観化され、事実認定の適正化につながることが基本的に確認された。もっとも、証拠構造論が、事実認定の適正化につながるためには、立証趣旨の拘束力の承認が不可欠であるとともに、証拠開示が欠けている現在の刑事手続においては、起訴事実の背後にある「事件の構造」を見据えた証拠構造分析が不可欠であることが確認された。 第二の点については、とりわけ陪審制度をとる英米法の当事者主義の訴訟構造の下では、当事者双方の冒頭陳述と弁論が陪審員に対する説得活動の中心を占めること、その前提には証拠開示が存在すること、証拠構造論の活用という志向は見られないことが明らかとなった。このことと比較すると、証拠構造論を活用した事実認定の適性化という志向は、判決理由制度を前提とした特殊日本的論理のようにみえる。しかし、英米法は、検察官立証終了段階での無罪評決指示制度が示唆するように、有罪主義の証拠構造を手続的に確認する制度をも採用しており、こうした制度の在在を直視するならば、証拠構造論を活用した事実認定の適正化への志向は、当時者主義刑事訴訟とは非整合的なものとして排斥される
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