1998 Fiscal Year Annual Research Report
金融革新下における金融市場での資産選択行動が実物経済に及ぼす影響の理論的研究
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10630002
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
真田 哲也 福島大学, 経済学部, 助教授 (50187267)
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Keywords | 経済 / 金融 / ビックバン |
Research Abstract |
金融ビックバンの歴史的意味を明確にするには、70年代の経済危機への先進資本主義諸国の対応のあり方を検討することから始める必要がある。ニクソン政権による金ドル交換停止とその後の過剰ドルの散布によるインフレ昂進、石油ショック、これらの70年代経済変動にたいして、日本はJIT、KEIRETSUなどによる産業面でのフレキシブルな生産体制の構築によって対応し一定の成功を納めて来た。他方、アメリカは、変動相場制へと転換したことによる為替リスクの発生、70年代低成長下でのインフレ激化など、増大したボラティリティに金融面で対応する。70年代、金融業界内部で規制された分野と規制のない分野での競争が激化し様々な金融商品が開発される。その帰結として、戦後の高度成長を前提とした金利規制方式が低成長と金融業界の競争のなかで破綻し、金融の自由化が遂行される。そしてそのことがさらに、新たな金融商品や金融技術の開発を促進し(「リスクマネジメント革命」)、ボラティリティの増大は、リスク防御的対象から積極的な利益機会としてみなされていく。S&L、ラテンアメリカ債務問題など80年代の米国の銀行危機は、こうした金融自由化の一結果として捉えられる。また、この危機の教訓から自己資本比率規制という金融の「再規制」がテーマとされ、同時に、金融リスクを回避しつつ、それを自国金融資本の競争力向上という戦略と結びけるため、アメリカは自国内規制を国際化すべくBISのバーゼル合意を実現する。かかる競争力を前提として日本市場での金融自由化要求も位置づけられ、他面では、ドル本位制を維持し、対米資金供給というグローバル・ファイナンスを保証するための金融自由化という側面も見落とせない。日本のビックバンは、対米関係による規定性という側面と、変動相場制への移行によるリスクヘッジ技術の積極的利用という新金融体制の日本での展開という側面が絡み合っている。 金本位制にかわるドル本位制が変動相場制に発展することで生まれた今日の金融体制を歴史的に位置づけ、かつそのなかで後発の日本型ビックバンの特徴を明確化していくこと、さらに、情報革命という新たな産業構造の展開との関連での位置づけを明確化することも今後の課題である。
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