1999 Fiscal Year Annual Research Report
金融革新下における金融市場での資産選択行動が実物経済に及ぼす影響の理論的研究
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10630002
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
真田 哲也 福島大学, 経済学部, 教授 (50187267)
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Keywords | 金融革新 / ドル本位制 / 資本移動 / 国際金融統合 |
Research Abstract |
金融革新の構造は以下の通りである。第一に、米多国籍企業の海外進出に呼応した米多国籍銀行の海外進出がユーロ市場の拡大と結合して進められ銀行間市場の国際統合がなされたこと。第二に、それが金融規制の強いアメリカに反作用的影響を与え、米国内金融自由化を加速させる一要因となったこと。第三に、60年代までのアメリカの資本流出規制策の資本流出促進政策への転換、金ドル本位制からドル本位制への転換によって、グローバルな資本移動が米国にとって不可欠の政策課題となったこと。そして、それがロンドン市場などへ反作用し金融市場間競争が激化させられるとともに、アメリカ国内の金融自由化政策の国際的普及によって証券市場を含む国際金融統合がさらに進行するととなった。理論上重要なことは、通貨面と金融面の両面での構造的変化が生まれた点である。つまり、「ドル本位制」(山本栄治氏)という金ドル交換停止以降の特有の管理通貨制度は、グローバルな資本移動という金融構造の転換と不可分のものであった。そして、国際的に移動する資本の量的拡大はアメリカの経常赤字の拡大と対応し、それがアメリカの国債発行によってファイナンスされることから、証券市場の国債統合という新たな質的な展開も生まれた。このように、特殊な通貨制度と特殊なファイナンスの仕方が成立したことが、金融革新の構造的特徴である。アメリカの経常赤字の拡大はドル本位制という通貨制度を前提としており、この通貨制度上の質的転換が後続する金融面での自由化を不可避とし、更に経常赤字の量的拡大が国際証券市場の統合という発展を要求したという相互関係を推論しうる。金融の自由化という直線的な論理だけでは、現代のカジノ的現象をときほぐすことはできない。他面では、金ドル交換停止によって金準備制約から解放された不換のドルが流通し、それが過剰貨幣資本となってバブルなどを生み出したという、通貨的側面からのアプローチがあるが、それも一面的である。通貨的側面と金融的側面は相互に関連し合っており、その固有の弁証法的関連を把握する視角が必要である。なお、今回の研究では、金融革新の構造を把握することが研究の中心となり、実物経済との関連については十分な成果が得られていない。
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