1999 Fiscal Year Annual Research Report
証券市場間のグローバル競争を通じてみた市場流動性と自己組織化
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10630005
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
青木 達彦 信州大学, 経済学部, 教授 (50092854)
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Keywords | 市場関リンケージ / 市場流動性 / 金融コンテージョン / 期待形成 / ノイズ・トレーダー・モデル / システミック・リスク / 自己組織化 / 再帰的相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、近年顕著な展開を見せる証券市場間のグローバル競争が金融・資本市場のリンケージを密にし効率化する(空洞化問題に関わる)一方で、どのような不安定性特性を内包しているかを、市場流動性の概念とコンテージョンのメカニズムを通じて明らかにしようとしている。このために90年代の新興市場経済の金融危機を取上げ、(クローズド・エンド型の投資信託である)カントリー・ファンドの「ディスカウント」が危機下で急激に縮小する、あるいはプレミアムを発生させることに注意し、これを説明するには、単にディスカウントを投資家「感情」のindexとして理解する「ノイズ、トレーダー・(NT)モデル」に立脚するだけでは不充分で、国際的投資家と現地の企業や銀行を対置して(利子率上昇に伴う)資産の現在価値の逆転を説明するといった「拡張された」形でのNTモデルの展開を主張している。 次いで、「非」ファンダメンタルズ因たる投資家の信条や確信の役割を軸にした上記金融コンテージョンによるクラッシュの説明に対し、「合理的期待形成仮説」を採用して期待が固有に果たす役割が封じられた下で、システミック・リスクを説明すべく、例えばポートフォリオ・インシュアランスにおけるダイナミック・ヘッジのような市場連関に訴えたモデルでの「市場流動性」の扱いを明らかにした。 さらに、以上の議論の枠組では、ファンダメンタルズに基づいて行動する(informed)value traderとuninformaedなそれとが並存し、市場暴落は両者の比率の大きさで説明されるようなものであり、かつ(拡張型であっても)NTモデルでは「長期的」には「負」の系列相関(autoregression)、従って「長期」均衡への収束が成立すると論じられていることに留意し、より抜本的な不安定性モデルを論ずべく、サンタフェ研究所で提出された「人工株式市場」論で、内生的かつ異質な期待形成の下でのシミュレーション分析が、暴落を説明し、かつGARCHの特徴をもつ価格系列を持つ体系へと「市場が自己組織化する」との議論をベースにして、G.ソロスの価値評価とファンダメンタルズ間の「再帰的相互作用refrexivity」を容れた期待形成を導入してシステミック・リスクを分析することを今後の課題とするに至った。
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