1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10630007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前多 康男 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (60229317)
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Keywords | 狭義銀行制度 / 効率性 |
Research Abstract |
わが国の銀行に関する資料を集めると同時に,現在の銀行制度のもとで発生しているリスクの性質を明らかにするための理論モデルの構築を試みた.特に,様々なリスクがどのようなメカニズムで発生しているのかを調べるために,リスクを明示的に導入し,一般均衡的なモデルの構築を行った.銀行に対する規制の形態として,預金者の保護のために導入されているソルベンシー規制を考え,その資源配分に与える影響を分析した.その結果として,(1)ソルベンシー規制の存在は,預金者の期待効用を増加する効果があるものの,銀行の期待利潤を減少すること,(2)ソルベンシー規制の存在は,効用フロンティアを均衡の近傍で局所的に縮小させること,(3)したがって,預金者の保護を目的とするならば,ソルベンシー規制より効率的な契約の形態が存在することが分かった.しかし,この結果はシステミックリスクが存在しないことを前提としている.つまり,銀行の預金が決済手段として使用され,銀行のネットワークが公共財として認識できる状態においては,ソルベンシー規制は,銀行の決済システムを保護する目的も兼ね備えていることになる.この場合に,狭義銀行制度を前提とすれば,銀行の決済システムは,狭義銀行制度の採用によって完全に保護されるので,ソルベンシー規制は非効率的な規制であることになる.しかし,狭義銀行制度の採用に伴う非効率性も存在するので,最終的な政策判断は,実証的な評価によるところとなり,現在,その評価のために収集した資料の活用を試みている.
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