1998 Fiscal Year Annual Research Report
電子マネーの貨幣・信用論上の意義と金融システム・金融政策への影響に関する研究
Project/Area Number |
10630014
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
三輪 春樹 東海大学, 教育研究所, 助教授 (70246148)
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Keywords | 電子マネー / 電子決済 / デビットカード / 金属貨幣 / 信用貨幣 / 中央銀行券 / 預金貨幣 / 信用創造 |
Research Abstract |
電子マネー実用化実験を巡っては否定的な話題が内外ともに多い。代わって銀行のキャッシュカードを用いたデビットカードが話題を呼んでいる。そのため電子決済(広義の電子マネー)は普及の可能性があるが、電子マネー(狭義)の意義や普及には疑問を挿む向きもある。しかし今後は相補的に普及が進むと考えられる。 電子決済と電子マネーの異同(ともに電子データで表されるが、前者は銀行に対する支払い指図書の電子化、後者は「貨幣」の電子化とみなされている)を踏まえた上で、理論的には次の点が整理されるべきである。 1、 貨幣の発展を、金属貨幣→国家紙幣(中央銀行券も含む)→電子マネーと、価値を表す素材の変化として捉えれば、扱いが便利になっただけで、国家の後ろ盾がないと流通、普及しないと考える。しかし、電子マネーが国家の通貨・金融政策の対象に含まれるのは当然だが、国家の権威がないと流通しないというのではない。 2、 資本主義経済での主要貨幣は銀行が発行する信用貨幣(債務証書)で、単純な流通における金属貨幣から資本主義的な社会的再生産を媒介する信用貨幣(銀行券)への発展が画期をなし、ついで発券の集中とともに銀行の与信形態が中央銀行券と商業銀行の預金貨幣とに分化する。電子マネー・電子決済は、銀行券(債務証書)が紙ベースから電子情報ベースに代わったものや、預金貨幣の支払いを指図する証書が電子化されたものである。 3、 中央銀行券が不換化され金属貨幣に代位した現在では、債務証書の性格が薄れ、実体貨幣がシンボル化したものと映る。電子マネーはシンボル化をより象徴するが、同時に電子決済との違いも薄れ、ひいては信用力のある電子手形など類似貨幣も現れるだろう。これらは貨幣のシンボル化を進め、貨幣範疇を広げ信用創造を容易にする要因を孕んでいる。今後はこのことの金融システム・金融政策への影響を含めて研究していきたい。
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