2000 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアの大都市成長に関する比較研究(労働市場論の視点から)
Project/Area Number |
10630027
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮本 謙介 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00209941)
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Keywords | 新国際分業 / 成長の三角地帯 / 工業団地 / 首座都市 / 国際労働力移動 / 内部労働市場 / 拡大大都市圏論 / 新中間層 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、以下の2点である。 第1は、現代東南アジアの地域経済圏構想として一定の進展をみている「成長の三角地帯」について、地域国際分業の視点から分析し、論文「『成長の三角地帯』とバタム島の労働市場」にまとめた。この地域経済圏では、シンガポールが情報・金融・経営管理の機能に特化した中核=ハブ都市として、またマレーシアのジョホール州とインドネシアのリアウ州がその周辺部の製造業生産拠点としてシンガポールに連結しており、周辺部の労働市場で最も開発が進展しているのが、日本とシンガポールの多国籍企業が大挙して進出しているバタム島の工業団地である。多民族・多国籍の労働者群が参入する同工業団地の労働市場における就業の階層的構成について分析するとともに、地域国際分業と労働市場の国際関係について考察した。 第2は、国外で就労するインドネシア人労働者を中軸にして、アジア間で展開する国際労働力移動について、とくにその歴史的・社会的に形成されてきた移動慣行に着目しながら分析し、論文「国際労働力移動の歴史的位相-サウジアラビア・マレーシア・シンガポールで就労するインドネシア人」にまとめた。アジア各国からの中東産油国への出稼ぎ労働や、東アジア・東南アジア域内での経済先進地域への労働力移動は、非合法就労も含めて広く知られているが、そこには歴史的に形成された公式・非公式の移動ネットワークが介在している。就労目的によるイスラム教徒の中東出稼ぎはメッカ巡礼と不可分であり、マレー世界の労働力移動も非公式の移民ビジネスに大きく依存している。とくに後者は、インドネシア→マレーシア→シンガポールという労働力移動の連鎖を形成して、重層化した国際分業と労働市場のあり方を規定している。 以上2点の研究成果は、いずれも東南アジアの大都市の経済発展とともに生起した国際分業と国際労働市場の性格に関わる分析課題である。
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Research Products
(2 results)