1998 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄県の「全県自由貿易地域構想」ならびに「国際都市形成構想」の研究
Project/Area Number |
10630049
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松田 賀孝 琉球大学, 法文学部, 教授 (80044832)
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Keywords | 沖縄県自由貿易地域構想 / 保護貿易主義 / マーカンティリズム / イギリス古典学派 / ドイツ歴史学派 / アメリカン・ナショナリズム / 新保護貿易論 / 新自由貿易論 |
Research Abstract |
本研究は、沖縄県が経済振興策の重要な柱の一つとして打ち出している自由貿易地域構想の分析検討を目的としているが、この課題の根底には、「自由貿易か、保護貿易か」という古くて新しいテーマが横たわっている。沖縄県の自由貿易地域構想についてのジャーナリスティックな現状分析に基づく議論はこれまでにもあったが、学問的次元の所説を踏まえた暴論は皆無であると言ってよい。そこで本研究においては、マーカンティリズムの領袖Th.Munの保護主義、イギリス古典学派の泰斗A.Smith,D.Ricardoの自由貿易論、ドイツ歴史学派の頭目F.List,A.Wagnerの保護貿易論、その他、資本主義体制の改革を主張してやまないK.Marxや、土地の共有制度を提唱するH.Georgeの特異な自由貿易論、さらにはA.HamiltonやD.Raymondのアメリカン・ナショナリズムを背景にした保護貿易論などの古典的な諸説を検討すると同時に、最近のJ.R.Hicks,M.Friedman,M.Kraus,P.R.Krugman等の「新自由貿易論the new free trade」ならびにG.Myrdal,R.L.Kuttner,R.Reich等の「新保護貿易論the new protectionism」の詳細な分析検討には特に力を傾注したい。 以上のような考察に基づく理論的枠組みframe of referenceを構築した上で、沖縄県の企図する自由貿易地域構想の具体的な分析検討はもとより、構想の可能性、将来性についても吟味することにしたい。現在、上記論者たちの文献を取り寄せ、通読し、ノートを作成すると同時に、沖縄県の自由貿易地域構想の成否がかかっているアジア地域の経済環境の分析、なかんずく通貨危機によって惹起された状況の分析に専念のないところである。本研究においては、あくまで理論的見地から地域問題ヘアプローチすることによって、普遍的なセオライゼイションと個別的なケース・スタディーの融合を図り、厳しい学問的批判に堪えうるような成果を期したい。
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