2000 Fiscal Year Annual Research Report
戦後「福祉国家」のアンチテーゼとしてのシチズン・インカム論の総合的検討
Project/Area Number |
10630050
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小沢 修司 京都府立大学, 福祉社会学部, 教授 (80152479)
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Keywords | ベーシック・インカム / 最低所得保障 / 「福祉国家」 / シチズン・インカム / 負の所得税 / 参加所得 / 社会的排除 / 社会的包摂 |
Research Abstract |
10月6日、7日に、ベルリンにて開かれたベーシック・インカム・ヨーロピアン・ネットワーク(BIEN)の第8回国際会議に参加し、ベーシック(シチズン)インカムを巡る最新の議論状況を把握するとともに、研究成果を2つの論文で公表した。 「福祉社会研究」第1号への投稿論文では、最低限所得保障構想であるベーシック・インカム論の日本での初めての体系的紹介にあたることから、ベーシック・インカム論の系譜、登場の背景とその主張の内容について詳述するとともに、類似の提案である負の所得税をベーシック・インカム論の自由主義=保守主義バージョン、参加所得を福祉集散主義=社会改良主義バージョン、社会配当を社会主義バージョンとして整理した。 「経済科学通信」94号への投稿論文では、失業の増大、ホームレスの増加など社会的排除の強まりに抗して社会的包摂の視点からの政策展開が注目されている問題状況に対して、アマルティア・センのいう潜在能力の剥奪という貧困概念に立てば社会的排除は貧困の発現形態の一つとして把握されることを明らかにし、あわせて欧米における「社会的排除-社会的包摂」視点からのワークウェア的所得保障政策の強まりに対して就労援助と所得保障を結びつけることが妥当性を有してはいないことを指摘した。 現在は、ベーシック・インカム論を労働時間短縮と関係させて論じてきているアンドレ・ゴルツの所論に焦点をあてた論考を「福祉社会研究」第2号への投稿論文として準備している。さらに、5月に開かれる社会政策学会での研究報告をも含めて最終の研究成果報告書に仕上げる予定にしている。
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Research Products
(2 results)